2024年7月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年6月14日

 ウクライナは、いつになるかは分からないが、いずれは加盟の環境が整いNATOに加盟することとなろう。しかし、ビリニュスで即時加盟が認められることがあり得ないことは元より、加盟に至る道筋をどこまで明確に描き得るかも定かでない。ただし、障害の基本的要因は、上記の論説が言うような2024年の選挙をめぐる米国の政治にあるのではない。

ウクライナ戦争を解決しなければ加盟は困難

 NATOは欧州の安全を確保するために創設された。しかし、NATO条約第5条に明記されている通り、NATOは加盟国に対する武力攻撃にはNATO全体で集団的に反撃することにコミットすることにより、加盟国に対する武力攻撃を抑止しようとする防御的な同盟である。

 ウクライナ戦争の帰趨は予測できず、戦争の終結はせいぜい「凍結された紛争」にとどまり、火種を温存し、容易に戦闘の再開に至ることがあり得ると見られる。そういうことであれば、NATOは、ウクライナを抱え込むことによって直ちにNATO対ロシアの軍事衝突に発展する事態を避けたいとなるのは間違いない。

 特に、NATOの集団的反撃の中核を担う米国や欧州の主要国が現時点でそこまで踏み込み得るとは考えられない。バイデン政権はウクライナで米国がロシアと直接戦うことは避けることを政策としている。それが、ウクライナの加盟が米国上院で3分の2の多数で承認され得ないであろう理由である。

 2008年のブカレスト首脳会議のいい加減な妥協を繰り返すことは避けねばならない。西側の一国としてのアイデンティティを希求するウクライナは歓迎されるべきである。ウクライナのNATO加盟の願望は同情をもって受け止めるべきである。さりとて、当面どういう解決があり得るのか定かではない。

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