元スウェーデン首相のカール・ビルトが、非営利の言論サイト「プロジェクト・シンジケート」のウェブサイトに5月17日付けで掲載された論説‘The High Stakes of NATO’s Vilnius Summit’において、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟問題が7月のNATO首脳会議の焦点になることを指摘し、ウクライナの将来だけでなくNATOの将来が首脳会議にかかっていると論じている。要旨は次の通り。
7月のリトアニアの首都ビリニュスにおけるNATO首脳会議での大きな課題は、ウクライナのNATO加盟問題について、2008年のルーマニアの首都ブカレストでの首脳会談での大失敗の再現をいかに避けるかである。
2008年のブカレストでの首脳会議に至る準備過程で、ウクライナのユシチェンコ大統領とジョージアのサーカシビリ大統領は、NATO加盟が彼らの国にとって最善の選択であると米国のブッシュ(子)大統領を説得した。しかし、フランスのサルコジ大統領とドイツのメルケル首相は「ロシアを疎遠にするリスクを冒すべきではない」などと主張して反対、言うまでもなくロシアも反対した。
結局、NATOの首脳達は考えられる最悪の妥協を行った。NATOはジョージアとウクライナは加盟国になるべしとする一方、直ちに加盟する訳ではないと付け加えた。
しかし、今や、ウクライナの加盟を改めて推進する動きがあり、この問題はビリニュスの主役となろう。
ただ、問題を巡る政治は15年前と同様に複雑である。米国と西側各国政府はウクライナの尚早な加盟に慎重だ。米上院が2024年の大統領選挙を前にウクライナの加盟を承認することはありそうにない。共和党議員がウクライナに「白紙手形」を与えることに反対の共和党議員がいるのみならず、バイデン政権と民主党議員はトランプに彼の「米国第一」の選挙作戦に有用な問題を提供したくないだろう。
他方、東欧のNATO加盟国の多くは、今や過去の間違いを正すべき時だと強く思っている。
即時ではないにせよウクライナの加盟への明確な道筋を示す解決策を生み出す必要があろう。ウクライナの安全は欧州の安定の鍵であり、今後何年もの間そうあり続ける。侵略に抵抗し欧州の安全を確保することが、そもそもNATOが創設された理由である。ウクライナの将来だけでなく、NATOの将来がビリニュスの首脳会議にかかっている。
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上記の論説が指摘するように、7月のリトアニアのビリニュスにおけるNATO首脳会議でウクライナの加盟問題が焦点になることは避けられないであろう。