中島厚志が読み解く「激動の経済」

2013年8月9日

»著者プロフィール
著者
閉じる

中島厚志 (なかじま・あつし)

新潟県立大学国際経済学部教授

1952年生まれ。東京大学法学部卒。日本興業銀行入行。パリ興銀社長、みずほ総合研究所チーフエコノミスト、経済産業研究所理事長などを経て2020年4月から現職。主な著書に『大過剰 ヒト・モノ・カネ・エネルギーが世界を飲み込む』(日本経済新聞出版社)。
 

 さらに、80年代後半以降も歴史的な不動産バブル期という異常な時期であり、その後のバブル崩壊や「失われた10年」の到来などに鑑みると、当時の経済金融政策を評価することはできない。

 しかし、割安の資金で行き過ぎた不動産投機を起こしてしまったとはいえ、80年代後半は、金融緩和と好景気で実質金利をマイナスにし、設備投資も増えて景気が大いに押し上げた時期でもある。

 足元、アベノミクスの下で、物価が上昇に転じる中で金融緩和と好景気両方の条件が久々に揃っていることは注目に値する。しかも、過剰流動性が先を争って不動産投機に動く状況にはなっておらず、金融緩和で好景気をさらに後押ししても当面バブルの心配はない。

政府・日銀は実質金利安の実現に努めよ

 もっとも、条件が揃っても、それでマイナスの実質金利が確実に持続するわけではない。確実な持続には、政府・日銀の政策努力が欠かせない。それは、長期金利をできるだけ低位に維持するとともに、名目成長率をかさ上げする努力に他ならない。

 日銀については、物価目標2%達成に向けて引き続き大胆な金融緩和政策を継続することが肝要だ。デフレ脱却につれて期待インフレ率がさらに高まれば、長期金利は徐々に上昇することとなる。しかし、大量の資金供給と国債購入は国債需給を引き締まらせ、相対的に長期金利を低くすることはできる。

 政府としても、消費税率を引き上げるなど財政健全化に努力して、長期金利が財政リスクに反応して上がる余地を減少させ、相対的に長期金利を低位に止めることが欠かせない。

 さらに、政府としては、短期策と長期の成長戦略を組み合わせて、日本経済の名目成長率と潜在成長力の引き上げを図ることも極めて重要だ。とくに、名目成長率を早期に引き上げるには、企業活力を一段と引き上げる円安の維持といわゆる六重苦(円高、電力制約、高い法人税率、FTA参加の遅れ、硬直的な労働市場、厳しい環境対応)解消に最優先で注力しなければならない。

編集部おすすめの関連記事

関連記事

新着記事

»もっと見る