2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年6月26日

 ウクライナの反転攻勢は、アゾフ海に向けてザポリージャ州を南進し、ロシアとクリミアの間の陸の回廊を遮断することを主たるルートとするであろうと見られ、上記の論説も指摘するように、ダムの決壊で水浸しとなったヘルソン州の地域でドニエプル川を渡河して大攻勢をかけることが想定されてはいなかったであろう。

 しかし、水浸しのゆえに、戦車の行動が封じられることはもとより、この地域でのウクライナ軍の作戦は短期的には不可能になったと見られる。これにより、両軍が対峙する前線は実際上その分短縮され、ロシア軍は緊急性の高い前線に兵力を再配置することが可能になったと見るべきである。

非対称性を緩和する措置が必要

 西側はこの事態を重大視すべきであろう。第一に、西側はウクライナの反撃の成功を期待してきているが、反撃に時間を要する可能性が高くなったと思われ、西側はこれに耐えて辛抱強くウクライナを支援する覚悟を求められよう。

 第二に、より重要と思われることであるが、西側はこの事態をロシアによる主要で邪悪なエスカレーションと位置づけ、これに対抗すべきである。上記の論説は原子力発電所における核事故の可能性に言及しているが、更なるエスカレーションの可能性もある。それを看過しないことを明確にするため、西側の武器支援は格段に強化されねばならない。

 ウクライナはこれまで西側から西側供与の武器でロシア領内を攻撃することを禁ぜられ、また、挑発的との理由で長射程の砲やミサイルの供与を拒否され、ウクライナ領内を勝手気ままに攻撃するロシアと非対称的な戦いを強いられてきたが、この際、前線から奥深いロシアの軍事目標と補給路を叩く能力を与えるような、この非対称性を緩和する措置が取られねばならないであろう。

 カホフカ・ダムの決壊による被害の惨状が明らかになりつつあるが、ロシアの行動の真実が、いわゆるグローバル・サウスと呼ばれる諸国においても理解されることが重要である。

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