恐らく米側は、イランが捕らえている米国人人質の解放の代償として、「凍結解除は国連の分担金の支払いと新型コロナウイルスワクチンのため」との名目でごく限定的な在米イラン資産の凍結解除の用意があるのであろう。他方、イランは、この機会に日量100万バレルの原油輸出を認めさせて一気に制裁の事実上の解除を狙っているのではないか。現在、中国が買っているのが日量100万バレルと言われるから、これは制裁の骨抜きに他ならない。恐らく、イラン側は、経済制裁が続いてもイラン経済は崩壊せず、核開発も進んでいることから自分達の方が優位にあると考えているのであろう。
なお、その後の6月14日の米ニューヨークタイムズ紙は、バイデン政権が、米国とイランの間の緊張を緩和するためにオマーンで秘密裏にイランと間接交渉を行っていると報じている。それによれば、イランがウランの濃縮度を60%以上に引き上げず、シリアとイラクで米軍関係者を攻撃せず、さらにIAEAの査察に協力し、ロシアに弾道ミサイルを売却しないこととの引き換えに、米国はこれ以上制裁を強化せず、イラン産原油を積んだ外国タンカーを拿捕せず、国連やIAEAでイランに対して懲罰的な制裁決議を提案しない由である。さらに、イランが3名の米国人人質を解放する代わりにイランの数十億ドルの凍結資産を解除することも交渉されている。
相次ぐハメネイ師健康不安説
次に興味深いのは、このボルトンの寄稿を含めてここ1カ月ほどで、ハメネイ最高指導者の健康不安と後継者問題を論じる記事が目に付くようになったことである。これは、かねてから健康不安が指摘されるハメネイ最高指導者の健康状態がかなり悪いという情報が漏れたためではないだろうか。もちろん、その情報が真実かどうかは分からないが、立て続けに最高指導者の後継者問題の記事が出るとことには、何らかの根拠がある可能性がある。
最後に、ボルトンも書いている通り、イランはロシアと組んでシリアから米軍を追い出そうとしている他、最近は、ヒズボラ、シリア内のイラン系民兵、パレスチナのイラン系組織によるイスラエルに対する積極的なロケット攻撃もある。こうした一連の動きを見ると、去年のスカーフ・デモを乗り切ったイランは反転攻勢に出ていると思われる。