英エコノミスト誌5月25日号の解説記事‘Who will be Iran’s next leader’は、いずれイランの最高指導者の交代があるだろうが、革命防衛隊が実質的な権力を握って専制政治を敷くであろう、とする予測を示している。要旨は次の通り。
誰が最高指導者ハメネイ師の後継者となるのか、果たして中東の最後の神権政治が生き残れるのか誰も分からない。信心深いイラン人ですら神権政治に対する信頼を失い始めている。
ハメネイ師の後継者としてハメネイ師よりさらに宗教的権威が劣る2人の有力候補がいる。一人は、保守強硬派で現大統領のライシ師、もう一人は、ハメネイ最高指導者の次男のモジュタバ師である。
1989年にハメネイ師を最高指導者に任命した時と大きな違いは、革命防衛隊が大きな力を持っていることである。革命防衛隊は、聖職者より優位にいる。過去30年間、ハメネイ最高指導者は、革命防衛隊を利用して宗教界のライバルを押しのけ、民衆の抗議デモを排除して権力を掌握してきた。
今後、革命防衛隊は最高指導者をお飾りにしてしまうように思われる。その意味で、ライシ師は革命防衛隊にとりピッタリの人物と言える。恐らく革命防衛隊は権力を掌握し、「聖職者による支配」を有名無実化するが、今と同様な専制政治体制を敷くだろう。しかし、体制に対して不満な中産階級をこれ以上刺激しないだろう。
対外政策は強硬なままで、核武装に走るだろうが、ペルシャ湾地域での米国のプレゼンスに反対しつつも、「大悪魔(米国)」と協議することにはより柔軟だと思われる。
一部の専門家は、革命防衛隊は服装や飲酒に対する自由をより認める新たな社会契約を国民と結ぼうとするのではないかと考えている。国民はこのような社会契約を喜ぶであろうが、しかし、政治的な自由はこれまで以上に制限されるであろう。
ハタミ元大統領やムサヴィ元首相といった真の改革派は、革命防衛隊や聖職者が支配する体制ではなく、非宗教的な市民社会を実現しようとするであろう。
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これは大変良い分析である。ホメイニ師のようなカリスマと宗教的な権威に欠けるハメネイ最高指導者が宗教界を抑え、権力を掌握するために革命防衛隊を利用した結果、革命防衛隊の力が強くなり過ぎ、次期最高指導者は、お飾りとなり、実権を革命防衛隊が握って、専制政治を行うというシナリオは説得力がある。
革命防衛隊のメンバーの国会議員の占有率は約4分の1であるのに対して、聖職者の比率は11%である由である。1980年には、それぞれ6%と52%だったのが大きく逆転している。これは、革命防衛隊の聖職者に対して優位に立ったことをよく表している。イラン経済についても、その30%を革命防衛隊が支配しているといわれている。
革命防衛隊が権力を握れば、国内的には、服装や飲酒の規制を緩めてイラン国民を惹きつけるだろう。対外政策は強硬で、特に「核武装しない」とのハメネイ師のファトワ(宗教指導者の命令)を廃止して核武装を進めるが、その一方で米国とも交渉することがあり得るかもしれない。