2024年12月14日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年4月14日

 米ニューヨーク・タイムズ紙コラムニストのトム・フリードマンが3月28日付の同紙に「ネタニヤフは信用できない」(Netanyahu Cannot Be Trusted)と題する論説を書いている。その論旨、次の通り。

(DVIDS)

 イスラエルの市民社会はネタニヤフ首相にイスラエルの独立した司法を支配する試みを一時停止することを強制した。しかし今回の問題は米国に新たな問題のある現実を暴露した。すなわちイスラエルの首相がイスラエルにとり、また重要な米国の利益と価値にとり、危険な非理性的アクターであるということである。

 ネタニヤフらは「司法改革」を通じて裁判所の政治的支配を何よりも優先して追求し、ネタニヤフが3月27日の演説で認めたように国を「内戦」の瀬戸際に持ってきた。イスラエル社会の諸潮流、軍、彼自身の党の一部からの前例のない抗議の後、ネタニヤフは彼の司法支配の試みを一時停止し、約1カ月、反対派と交渉することにした。

 50年間、米国はイスラエルに何十億ドルもの経済・軍事支援をしてきたが、ネタニヤフとその息子は、首相に反対する巨大なデモの背後には米政府がおり、従ってこれは真のグラスルーツ(草の根民主主義)の抗議ではないとの嘘をまき散らしている。ネタニヤフとその息子は2人とも謝罪するまで米に入国させるべきではない。

 ネタニヤフは、国民的対話なしの司法クーデターの試みを凍結するよう求めたガラント国防大臣を解任した。つまり、イランが核爆弾のための核分裂物質を2週間足らずで入手でき、アラブ諸国との外交上の成果を上げている時に、スモトリッチ財務大臣のようなユダヤ至上主義者などに自由を与えるための司法改革をやり通すために、自国の軍を分裂させる危険を冒したのだ。これは米国とイスラエルの外交の中東での最大の成果であるアブラハム合意を危険に晒すことになる。

 これは米国の中東戦略の重要な柱であるヨルダンは言うまでもなく、アラブ首長国連邦(UAE)とバーレーンを驚愕させた。もしネタニヤフとその仲間がヨルダンを不安定化すれば、風が起こり、旋風に巻き込まれるだろう。

 ネタニヤフは、脱税と金融詐欺で3回有罪になった宗教政党「シャス」の指導者、アリエ・デリを保健・内務大臣(次の改造では財務大臣にすると約束)に任命できるように法案を通そうとしている。ネタニヤフは、イスラエルの財務省(米の納税者がここ50年何十億ドルも寄付してきた)を騙した旧友を財務大臣にするために、最高裁決定を却下し得る立法を行うことを急いでいる。

 これらは、イスラエルの納税者、イスラエルでの法の支配、イスラエル最高裁、米国への侮蔑を示している。彼が道徳的制約を無視する指導者である更なる証拠である。

 今や、米政府、米議会、米国のユダヤ人指導者やロビイストは、街頭抗議に出たイスラエルの人々とともにあることを明確にする時である。

*   *   *

 イスラエルにおける最高裁判所の権限の弱体化を狙ったネタニヤフの司法改革の大きな柱は、(1)裁判官の任命への政府の影響力を強める、(2)最高裁による違憲判断を国会が覆すことができるようにする、という2点である。これは大規模な抗議活動を引き起こした。


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