ネタニヤフは3月27日、「交渉により内戦を避ける可能性がある時には、私は交渉のためのタイムアウトを選ぶ」と述べ、審議が先送りされることとなった。今後ヘルツォグ大統領のもとで与野党が会合を持ち、1カ月間、妥協案を探して交渉することになっている。
米各紙はこの問題について取り上げているが、このニューヨーク・タイムズ紙のフリードマン論説は特に舌鋒鋭くネタニヤフ批判を行っている。フリードマンのネタニヤフ批判は的を射ており、その論旨に賛成である。
バイデン大統領は3月27日のインタビューでこの件について聞かれ、ネタニヤフが「司法改革から」離れることを希望すると述べた。ネタニヤフはこれに対しイスラエルは主権国家であり、最善の友人からであっても圧力は不要であり、自分で決めると反発している。
米・イスラエル関係がここまでこじれることは珍しく、バイデンはネタニヤフ訪米の時期について問われ、近い予定はないと答えている。トム・フリードマンは、ネタニヤフも息子も謝罪しない限り米国に入国を許可されるべきではないと述べている。
国内外に課題山積のネタニヤフ政権
ネタニヤフはサウジアラビア・イランの国交正常化の余波、アラブ諸国との関係悪化、イランの核開発、パレスチナへの強硬策とそれに関連した諸問題など、外交上難しい問題を多く抱えている。そうした中で、国内を分断する司法改革を自分と閣内の過激派を司法から守るために急ぐなど、優先事項を間違えている。いかに撤退するかを考えるべきであろう。
ネタニヤフは与党の右派「リクード」の中にも反対派を抱え、司法改革法案に過半数を確保できるかも怪しくなっている。3月27日に発表された世論調査では現連立政権の支持は落ちており、かつて中道右派連合「青と白」を率いていたベニー・ガンツ元副首相への信頼が高まっている。ウォールストリート・ジャーナル紙は、もし選挙が今日あれば、今の連立は120議席中の53~54議席にとどまり、野党は61~62議席になる、と指摘している。
ネタニヤフがイスラエル国内のデモを外国、それもイスラエルの第1のスポンサーの米国が組織しているとの認識を示したことは、彼がデマゴーグ(扇動家)であることを示すと同時に陰謀論的説明に頼る彼の傾向を示している。米国を良く知る彼が、なぜ米国を非難する陰謀論の虜になったのかよくわからないが、政治的に大きな過ちであったと思われる。