2024年2月29日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年7月18日

 このシカゴ演説は、バイデンの経済専門家である経済諮問委員会(CEA)が深く関与したものと想像される。特に6月28日に大統領府が発表したファクトシート「バイデノミクスは成功している」はCEA作成であろう。そのせいか、きちんとした経済上の議論をしており、観念的、イデオロギー的なグローバリゼーションや自由貿易の批判はほとんどない。それは一定の好感を与える。

 テットは、バイデンの経済顧問について、民主党政権の主流を占めて来た者(「ルービン勢力」)とは違う専門家勢力(「部族」)だと指摘する。この指摘には納得する。テットが取材したというブッシー(CEA委員)は、マサチューセッツ州アムハーストの近くに1970年に設立された実験的な大学であるハンプシャー・カレッジ卒業の女性エコノミストだという。

 6月28日、バイデンはシカゴで演説し、これまでの経済成果を誇示し、バイデノミクスをアピールした。それはバイデンの最重要な経済演説として記憶されるだろう。初めて公式に「バイデノミクス」なる言葉を自ら使った。「バイデノミクス」は成功しているとし、それはトップダウンではなく、中間層から、またボトムアップで経済を築くものだと主張する。その三本柱として、①米国でスマートな投資をする、②労働者の教育と能力強化により 中間層を成長させる、③コストを下げ、小企業支援のために競争を推進すること、を挙げた。

懸念点はやはり貿易政策の欠如

 一定の真理であるトリクルダウン経済への攻撃は、大統領選を念頭に共和党のレーガン政策回帰の試みを封じる深謀遠慮があるのかもしれないが、あまりに厳しく、違和感を覚える。もう一つ、労働組合の役割を強調し、組合への加入を推奨する点もやや驚いた。バイ・アメリカン政策の強調も同様だ。しかし、グローバリゼーションや自由貿易への観念的攻撃は封じている。

 バイデン政権の政策で貿易政策の欠如ほど目立ち、決定的な欠陥はない。今や貿易政策のない経済政策は不可能だ。また関心のある部分、部分の政策では断片的な寄せ集めになり、総体として統一的な政策にはなっていない。更に、戦後、米国が主導、構築してきた国際経済貿易秩序を損なうような言動を米国自身が取っていることは、問題だ。バイデンはバイデノミクスの成果ばかりを強調するが、それは多分にコロナ対策の支出拡大によるリバウンド効果もあるだろう。

   
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