2024年11月22日(金)

唐鎌大輔の経済情勢を読む視点

2023年7月18日

 デジタル関連の赤字は元を質せば、研究開発分野において日本が劣後してきたことと無関係ではないのだろう。研究開発費に関し、GAFAMが日本企業を遥かに上回っているという事実は広く知られている(未来投資会議(第31回)配布資料)。その結果が米国の誇る独占的な競争力の源泉であり、日本のサービス赤字の主因であるという事実は見逃せない。

 ちなみに、過去数十年にわたって米国や韓国、その他主要国と比較しても日本の研究開発分野への人的・金銭的負担は明らかに劣後しているという指摘もある(図表③)。日本は今、サービス赤字を通じてそのツケを払わされているとも言えるだろう。

 対内直接投資促進やイノベーションボックス税制導入でこうした状況が一夜にして変わるとは思わない。だが、ようやく正しい方向へ処方箋が打たれ始めたようにも思える。

「円安を活かすカード」は1枚でも多い方が良い

 今後の日本では基礎的需給構造の変化を背景として円高局面よりも円安局面の方が長いものになっていく可能性が高いと筆者は考えている。基礎的需給構造の変化に関しては、過去の本コラムへの寄稿『外貨が入ってこない日本 経常黒字でも「円」が脆弱な理由』などでも議論させて頂いた通りだ。

 仮に、円安が日本の新常態なのだとすれば「円安を活かすカード」は1枚でも多く用意しておいた方が良い。もちろん、インバウンド受け入れに勤しんで旅行収支黒字を拡げようとする試み重要ではあるのだろう。

 だが、観光産業だけで500兆円の経済を揚させることは難しい(19年のインバウンド最盛期の旅行収支黒字でも約+2.7兆円しかなかったのだから)。片や、北朝鮮以下という状況にある対内直接投資のポテンシャルは相応に大きさを感じさせるものであり、奏功すれば、再び日本経済が円安を起点として輸出数量を伸ばすという構図を取りもどせる芽もなくはない。

 いずれにしても、22年に直面した円安が長きにわたった「円高の歴史」の終わりであるとすれば、今後は円安を活かす手段としての対内直接投資が鍵になってくることは確かだろう。対内直接投資残高の引き上げは今年度「骨太の方針」における最重要論点の1つと言って差し支えないように感じる。

「骨太の方針」に関する記事をまとめた特集:検証「骨太の方針」はこちら。
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