2024年12月22日(日)

唐鎌大輔の経済情勢を読む視点

2023年4月13日

 昨年10月下旬に152円をつけたドル/円相場はその後円高方向の歩みを進め、昨年末から今年初頭にかけては円高見通しが圧倒的に優勢となった。今でも「米国の利上げ停止、ひいてはその先にある利下げ着手を念頭にドル安・円高が予想される」という見通しが支配的なものになっているように見受けられる。

 しかし、2023年も最初の四半期が終わり、円高は進んだだろうか。今年1~3月期に関し、円の対ドル変化率は▲1.3%とむしろ円安・ドル高が進んでいる。同じ期間、円の名目実効為替相場は▲1.5%と下落しているので、対ドルだけではなく主要貿易相手国の通貨に対して万遍なく円は下落したことになる。

(Torsten Asmus/gettyimages)

 米金利がピークアウトすれば円も元々の水準に回帰していくかのような論調が年末年始は散見されたが、少なくとも今のところそうはなっていない。昨年11月以降、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ幅は75bp→50bp→25bpと縮小し、今や年内利下げ観測も珍しくなくなっている。それでも多くの参加者が予想したほど円高は進んでいない。

 筆者は今後も大きな円高になる可能性は高くないように感じている。ドル/円相場の帰趨を検討する際、真っ先に用いられるのが日米金利差とドル/円相場のチャートだろう。確かに、両者の関係性は安定しており、参考にすべきデータの1つではあると筆者も思う。しかし、通貨は金利だけで動くものではない。

 最終的には需給で決まるのであり、その議論が軽視される風潮はまだ強いように感じる(恐らく以下に論じるようなテーマやデータは混み入っているので好んで取得する向きが多くないからだろう)。筆者は、国際収支統計が示唆する日本円ひいては日本経済の直面している構造変化の可能性をもう少し丁寧に見ることが、結果的に円相場見通しに役立つと考える立場だ。


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