2024年11月21日(木)

MANGAの道は世界に通ず

2023年8月5日

高度経済成長期には大いにプラス

 さて、品が良くルールと行儀を守るという、落ち着いた日本人の国民性だが、高度経済成長期には大いにプラスに働いた。

 大量生産大量消費の時代においては、高品質なものを効率の良いマニュアルを作り生産していくやり方が、製造業を中心とした日本を、世界で躍進させていく原動力になったのだ。

 典型的なシーンが、『ヤング島耕作 主任編』2巻にある、亀渕雄太郎というキャラクターとの論争のシーンだ。

「組織には和という考え方がある。君のやり方だとそれが乱れてしまい、賛同できない」

「なんですかその旧態依然とした考え方は? まず"個人ありき"です」

 作品屈指の名エピソードであり、まさにブルーと、それ以外の意識段階のぶつかり合いだ。最終的には、和を重んじるブルー型の価値観を持った島耕作たちが、亀渕の犯した大きなミスを、チームプレーでカバーしてことなきを得る。ブルー型の良いところをエピソードの中で強調した締め方である。

 何度も言うように、意識段階に良い悪いはなく、「その時の状況や環境に応じて、向いている価値観が存在している」というだけである。上記のシーンは典型的な、ブルー段階が有効に働いたシーンだ。

 このように、日本の高度経済成長、企業戦士たちが活躍した時代における、中心的な意識段階「ブルー」のイメージが非常にわくため、本作はとてもオススメなのである。

 なお亀渕の言動は一見、自由を重んじる「オレンジ型」に見えるが、実際は単なる自己中心のレッド型の押し付けでもある。本連載にて後述するが、本物のオレンジは相手の権利や尊厳もリスペクトするため、一方的に自分の主義主張を押し付けないのだ。「意識段階は一つ飛ばしごとに似る」という定理もあり、レッドとオレンジは表層的に似る。これのように、別の意識段階を偽装した人や組織も世に多く存在しているのだ。

 さて、バブル崩壊以降の世界情勢だ。情報通信産業が発達し、高品質な大量生産の製品でなく、イノベーションを起こすリーダーを重視し、革新によって世界的なサービスを生み出すことが重要となった。この時代は、「和を重んじて横並びに行動する」行儀の良いサラリーマンたちには非常に不得手となる。

 2022年2月に連載を終了した、『相談役 島耕作』の最終巻ではその辺りが如実に描かれている。


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