上記の論説でルースは、デサンティスがトランプとその支持層はトランプ信奉を軸とする一種のカルトであるとの認識を欠いていることがその理由だと論じている。つまり、トランプを欠いたトランプ主義を説いても始まらない。トランプを欠いては、より過激なトランプ主義の政策実行力を訴えても意味を成さない。彼がトランプの改良版を演じても、トランプには勝てないという訳である。
FTのジャナン・ガネシュも5月30日付の論説‘Why DeSantis is losing Republicans to Trump’で、この議論に重なる説明をしている。即ち、トランプが彼の支持層に与えている恩恵は、同志の間の精神的な交流のメンバーシップにある。トランプが当選し、彼の政策が実現することは、追加的な恩恵に違いないが、それよりも重要なのは彼の感情的・精神的サービス、つまり、部族的な帰属意識の提供にある。彼らにとって重要なのはデサンティスが売り込もうとしている本選挙で勝てる資質とか行政能力ではない、とガネシュは論じている。
デサンティスvsトランプの討論会は実現するか?
ルースは、トランプとの対決を求めているが、デサンティスは最近も「必要なことは米国の将来の議論である。指名を得れば、バイデンの失策に焦点を当て、将来のビジョンを描きたい、4年前の1月に起きたことに焦点が当たることが有用とは思わない」などと述べており、トランプとの対決には逃げ腰のようである。
ルースは、クリス・クリスティーが共和党候補の討論会でトランプに挑むことに期待している。クリスティーは、機密文書の持ち出しの件でトランプを公然と批判した共和党候補二人のうちの一人である。彼は討論会でトランプと対決する積りはあるようである。トランプは討論会に出ないと言っているが、クリスティーはタフ・ガイを演ずるトランプにとって討論会を欠席することには政治的に非常なリスクがあり、結局は参加するであろうとルースに語っている。しかし、トランプが彼を信奉するカルトに支えられているとすれば、トランプを論戦で追い詰めることができたとしても、彼の支持層の切り崩しにいかほど役に立つのか疑問に思える。結局のところ、共和党には、それがデサンティスでないとすれば、トランプに代わる候補は見当たらないのかも知れない。