2024年12月23日(月)

バイデンのアメリカ

2023年6月17日

 「米政治史上、最高齢候補」としてあえて来年選挙に再出馬したバイデン大統領。健康、メンタル面の不安を指摘され、支持率低迷にあえぎながらも最近、否定的だったこれまでの評価を見直す指摘も少なくない。

(ロイター/アフロ)

債務上限引き上げ交渉で見せた粘り腰

 きっかけは、先の未曽有の危機に立たされた米政府債務上限引き上げ問題で、政府と野党共和党主導の下院との決定的ともいえる対立を土壇場で見事に切り抜けたバイデン氏の手腕と粘り腰だった。

 債務上限の引き上げ法案が議会で可決されなかった場合、米国は史上初の「債務不履行」(デフォルト)に陥り、世界規模の金融危機にも発展する恐れがあった。

 さっそく米「Vanity」誌は、議会との債務上限引き上げ合意で危機回避が確定した直後の去る6月1日、「マッカーシー下院議長は政府相手に一定の譲歩を引き出し『勝利宣言』をしたが、最大の勝利者はこれまで過小評価されてきたバイデン大統領だった。彼は、極めて困難な状況の下で、可能な限りの最善の取引を勝ち取り、米国民を危機から救った」と高い評価を示した。

 翌2日には、英国有力経済誌「Economist」が、サイモン・ラビノビッチ米経済部長の「過小評価のジョー・バイデン」と題する署名記事を掲載、以下のように論評した。

 「過去数年、バイデン氏については、マイナス評価、イメージがつきまとった。2020年大統領選の党大会で民主党候補に確定した際にも、〝覇気のない候補〟というのが大方の見方だった。ところが、すぐにその後の選挙戦を通じ『トランプを打ち負かせる最も安全で確実な民主党の賭け』と見られるようになり、実際に勝利した。その後『米国のより良い再建build back better』をスローガンに掲げホワイトハウス入りして以来、実現できずお払い箱になると見られていた具体的再建計画の主だった法案も次々と成立させた。先月の債務上限引き上げ交渉でも、野党の執拗な予算カット要求を巧みに交わし、相手を打ち負かすだけの器量をいかんなく発揮した」

 「民主党急進派は当初、共和党と債務上限引き上げで交渉し始めれば、取引で福祉、環境保護政策の規模縮小に応じざるを得なくなるとして猛烈に反対したが、結果は、バイデン政権の目玉ともいうべき気候変動関連や社会保障予算は手づかずのまま合意に達した。瀬戸際まで続いた緊迫の交渉結果について、両党ともに〝勝利宣言〟し、合意内容についての下院審議では、民主党議員の80%、共和党議員の70%が支持投票する結果となった」

 「もちろん、これをもって、来年選挙で果たしてトランプ候補(あるいは別の共和党候補)に勝てるのかというこれまでの疑念が消えるものではない。しかし、バイデン氏の大統領候補としての適性を疑う場合には、最低でも、『愛されるより、恐れられるほうがまし』というマキャベリの格言を今一度思い起こす必要がある。なぜなら、バイデン氏にとっては、過小評価されていた方が却ってよいからだ」


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