・多難続きのトランプ候補
トランプ氏は、去る4月の不倫もみ消し事件をめぐるニューヨーク州検察局起訴に続き、今月初めには、機密文書持ち出し・隠匿疑惑の連邦大陪審で起訴された。大統領経験者で2度の起訴処分を受けるのは米国史上初めて。
さらに近く、ジョージア州検察が20年大統領選挙介入・妨害容疑で同氏起訴の公算が大きくなっているほか、米司法省特別検察官が21年1月の連邦議事堂乱入・占拠事件を教唆・扇動した疑いで別件捜査に乗り出している。
この間、トランプ氏は相次ぐ刑事訴訟事件の当事者として、対応と法廷闘争に多大な時間と労力を割かざるを得ず、その分、大統領選の予備選、および本選での長丁場の戦いに支障をきたすことは避けられない。
かりに、予備選を勝ち抜き、本選に臨んだとしても、今後の一連の裁判審理を通じ、共和党支持者の間で次第に離反者が広がる恐れもある。
・無風状態のバイデン候補
民主党側は、バイデン氏のほか、弁護士のロバート・F・ケネディ・ジュニア氏、著作家のマリアン・ウィリアムソン女史ら数人が出馬意向を表明しているが、民主党内での最新動向調査では、バイデン氏支持が60%と他候補を大きく引き離しており、健康問題で不慮の事態が生じない限り、このまま党大会で指名獲得の公算は極めて大きい。
・党大会後の民主党挙党体制
今月初めにCNNテレビが公表した世論調査によると、バイデン氏に対する「好感度」は、昨年12月時より7%下落し33%となったほか、大統領としての支持率も40%にとどまり、依然として不人気が続いていることに変わりない。
しかし、来年党大会以後、11月本選挙で共和党候補との対決となった場合、全米有権者の過半数を占める民主党支持者が、いつまでもバイデン批判を繰り返し、結果的に共和党の政権奪回を許すとはまず考えにくい。
20年大統領選では、民主党支持者はバイデン氏に不満を抱きながらも、最終的に本選では団結し、トランプ現職大統領相手に700万票以上の差をつけ、勝利に導いた。24年でも同様シナリオが十分あり得よう。
さらに、民主党支持層以外にも、ここ数年拡大しつつあるといわれる無党派層の間でも、共和党側の最終候補次第では、その多くがバイデン支持に回ることが予想される。
・カギ握る高齢層の支持率
バイデン大統領はこれまでの実績として、高齢者層に関心の高い社会保障・福祉関係予算を一貫して重視し、手厚い措置を講じてきた。
去る3月には、ラスベガスで次期大統領選を念頭に置いた重要演説を行い、詰めかけた多くの高齢者支持層を前に「共和党候補者たちは、社会保障年金や公的医療保険の予算カットを目指している」と批判、違いをアピールした。