内政、政局、外交で見せた成果
このほか、いくつかの米ネットメディアでも、「大統領は議会取引では何十年もの経験と実績があり、今回も見事にその真骨頂ぶりを示した」「野党との合意に失敗し、デフォルトに追い込まれたら、来年選挙で勝ち目はないとみられてきたが、予想を覆した」「超高齢でもうろくしているといった批判はお蔵入りにすべきだ」といった、バイデン氏の力量を再評価する指摘が少なからず出始めている。
しかし、バイデン氏に対するプラス評価は、今回だけに限ったことではない。就任以来の内政、外交両面においても、以下のような点が指摘されている。
内政ではまず、2021年1月就任当時、米国はトランプ前政権当時の失政もあり、コロナ禍、経済低迷、環境汚染悪化など深刻な危機に直面していた。しかし、その後の2年間で、終焉には程遠いもののコロナ危機を乗り切り、経済面では数兆ドルに上る巨額のインフラ整備投資法案を超党派で可決させ、雇用拡大により失業率も3%台と過去50年ぶりの低水準となった。
物価に関しても、車社会の米国でとくに関心の高いガソリン価格も、数年ぶりに落ち着きを取り戻すなど、諸物価インフレへの懸念も改善に向かっている。
政局面では、昨年の中間選挙で、事前予想では上下両院ともに大敗が予想されたが、結果的に下院では最小限の議席減に踏みとどまり、上院では議席増で多数党を維持した。
医療・福祉面でも、「インフレ抑制法」成立により、300万人の生活困窮者を新たに国民健康保険対象者として救済し、「メディケア法」改正により、数千万人の高齢者の処方医薬品価格引き下げを実現させた。
外交面ではまず、前政権下で悪化した日欧同盟諸国間との関係修復に腐心し、各国歴訪を通じ、信頼関係の再構築で一定の成果を挙げた。とくに増大する中国の脅威に対する結束強化は重要な一歩となった。
また、前政権時代の国連はじめ国際機関軽視外交を見直し、対外関与の方向を打ち出した。その一環として来月、国連教育科学文化機関(UNESCO)への復帰が確定している。
来年の大統領選に向けては
では、肝心の来年選挙に向けての展望はどうなのか。この点でも、バイデン再選はけっして侮れない。その理由として、以下のような点が挙げられよう。
・共和党候補の乱立
共和党はこれまで、トランプ氏のほか、ニッキー・ヘイリー元国連大使、エイサ・ハッチンソン元アーカンソー州知事、ロン・デサンティス・フロリダ州知事、マイク・ペンス前副大統領、ティム・スコット上院議員、クリス・クリスティー元ニュージャージー州知事ら10人が候補として名乗りを上げている。
このまま来年夏の党大会に向けて、指名獲得レースの激化が予想され、共和党有権者間でも、支持候補をめぐり〝内ゲバ〟の懸念も少なくない。仮にトランプ氏が最終的に同党指名候補となったとしても、支持者間のしこりが残り、本選で党離反者が出る可能性もある。