2023年11月28日(火)

バイデンのアメリカ

2023年5月9日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 米国のバイデン大統領が「トランプ主義との戦い」を前面に掲げ次期大統領選への出馬を正式表明した。だが、最終的に対決する共和党候補については、決着までにまだ曲折が予想され、前のめりの感はぬぐえない。

出馬表明時から「打倒トランプ」を掲げたバイデン氏だが、功を奏するのか(ビデオ画像、OFFICIAL YOUTUBE ACCOUNT OF JOE BIDEN/ロイター/アフロ

トランプへの闘志むき出し

 「私は、社会保障を削り、大金持ちのために減税し、女性の中絶権を奪うMAGA過激主義と戦うために再び出馬する」――。バイデン大統は去る4月25日、全国民向けに公表した再選出馬表明のビデオ声明で、名指しこそ避けたものの、トランプ共和党候補との再度の対決への闘志をあらわにした。

 とくに「MAGA(再び偉大なアメリカをつくろうMake America Great Again)」は、トランプ氏が2016年大統領選の看板スローガンとして打ち出し、大統領在任中、そして来年大統領選においても、自らの再選戦略の基盤と位置付けている。このため、バイデン氏としては、トランプ候補との違いを最初から浮き彫りにすることで、有権者へのアピール効果を狙ったものと思われる。

 また、バイデン氏にとっては個人的にも、20年選の結果を未だに否認し続けるトランプ氏は、〝許すべからず宿敵〟であることも間違いない。

 それだけに、再選出馬表明の第一声から、トランプ氏に対する並々ならぬ闘志をむき出しにしたものと言えよう。

 米メディアの一部には、バイデン氏が今回、80歳という高齢を押してまで出馬決断した最大の理由は「トランプ打倒」そのものにあり、もし、トランプ氏が対立候補でなかった場合、自らも大統領在任1期のみでの退任もあり得た、との見方も出ていたほどだった。

 すでに多くの米主要メディアでも、24年大統領選を「バイデン対トランプの再対決」ととらえる論調が目立っている。

 有力誌「Atlantic」最新号(電子版)は, バイデン氏に挑戦する「最終的共和党候補」として、トランプ氏の名を挙げ、その理由を以下のように説明している:

 「政治組織としての共和党は、大統領選指名候補選びの段階ですでにまともな機能を果たせなくなっており、一人の教祖的資質にコントロールされてしまっている。すなわち、頑迷固陋(がんめいころう)なトランプ支持者が今や、党のバックボーンとなっており、彼らの狂信主義に支えられたトランプは、他のいかなる候補も太刀打ちできない指名獲得票を手中に収めている。他の候補が指名レースで勝つには、トランプを頭ごなしにたたくともに、全国共和党委員会に対しても何百万人もの党支持基盤票の断念を求めざるを得なくなってくる……彼が最終的に共和党候補となることは、決まったも同然なのだ」


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