2024年11月22日(金)

バイデンのアメリカ

2023年5月9日

 今のところ、「正式起訴」発表後、トランプ氏に対する共和党員間の支持率は、むしろ上昇傾向にある。

 米NBCテレビが去る4月23日、公表した意識調査によると、来年の大統領選予備選での「最もふさわしい共和党候補」については、「トランプ支持」が46%に達し、31%にとどまっているデサンティス氏を引き離している。

 しかし、もし今後、個人的な不倫もみ消し事件にくらべ、はるかに刑の重い一連の国家的犯罪について、「起訴」が相次いだ場合、これまでのトランプ支持率が急速にしぼんでいくことも十分考えられる。

 また、同氏はこれら懸案の刑事訴訟案件で起訴処分を受けた場合、莫大な弁護費用出費と、法廷闘争の準備に多大な時間と労力を割かざるを得なくなり、肝心の来年予備選に向けた選挙活動に少なからず支障が生じることも予想される。

 そしてその結果として、来年夏の共和党全国大会では、トランプ候補に代わり、デサンティス氏、あるいは他の候補が党指名候補となるシナリオも否定できない。

バイデンの脅威となりつつあるデサンティス

 この点で、とくに注目されるのが、デサンティス氏の動向だ。

 同氏は、米国の対ウクライナ政策に関し、去る3月5日、カリフォルニア州「ロナルド・レーガン大統領図書館」における演説で、「ウクライナ戦争は、たんなる領土問題をめぐる紛争であり、米国の国家利益と何の関係もない」などと言明。米国の対ウクライナ経済・軍事支援に終始批判的なトランプ氏と同様の「孤立主義者」の片鱗をうかがわせかに見えた。

 しかし、ウクライナに対する積極的テコ入れを支持する共和党主流派(とくに上院)や、共和党系財界人たちからの猛烈な反論に遭い、数日後には発言を訂正、「私の真意ではなかった」「ロシアのウクライナ侵攻は間違いであり、道徳上も認められない」とウクライナ寄りの立場に大きく軌道修正した。トランプ氏が大統領在任中、親密な関係を持っていたプーチン大統領についても「戦争犯罪人」と断じた。

 その後もデサンティス氏は、日本、韓国、英国、イスラエルなど同盟各国を歴訪、各首脳らとの会談を通じ、「西側陣営の結束」の重要性を確認した。この点でも、北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国との関係悪化を招いたトランプ氏との立場の違いが明確になりつつある。

 また、中国についても、批判的な見方を強めつつあり、少なくとも外交政策面では、バイデン民主党政権の立場に歩み寄った動きを見せ始めている。

 こうしたことから、再選目指すバイデン氏としては、もし、デサンティス氏が近く、正式出馬表明し、今後の共和党指名争いで優位に立った場合、当初から打ち出した「トランプとの戦い」に重点を置いた選挙戦略の大幅見直しを迫られることは必至の情勢だ。

 最終的に共和党指名候補が誰に落ち着くにせよ、来年大統領本選に向けてのバイデン氏の戦いは、前回大統領選以上に、高齢に鞭打ちつつのかなり厳しいものになりそうだ。

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