2024年12月10日(火)

バイデンのアメリカ

2023年4月11日

 トランプ前大統領の不倫もみ消し事件をめぐる正式起訴は、共和党内の結束に乱れを生じさせ、政権奪回を目指す来年大統領選に向けた同党戦略にも暗い影を落とし始めている。

不倫もみ消し事件で出廷したトランプ前大統領(左)は罪状を全面否認した(ロイター/アフロ)

「党内での求心力回復」の声も目立つが

 去る4月4日、もみ消し疑惑で起訴されたトランプ氏がニューヨーク州裁判所に初めて出頭、罪状すべてについて全面否認したのを受けて、共和党保守派の間では「起訴は民主党急進左派の陰謀」「大統領選への干渉」といった批判が相次いだ。大統領選に出馬表明したトランプ氏に対する有権者からの寄付金も急増しつつあると伝えられる。

 米議会でも、ケビン・マッカーシー下院議長はじめ同党下院議員の多くが、起訴に踏み切った州検察を激しく攻撃するとともに、トランプ氏擁護の動きを見せている。

 わが国含め内外メディアの間では、今回の起訴をきっかけに、「共和党内にトランプ氏への同調ムード広がる」「党内での求心力回復を加速」などの報道も目立つ。

 しかし、こうした見方とは裏腹に、実際は来年大統領選挙に向けて、党としての困惑と苦悩は深まりつつあるのが実態だ。最新の二人の共和党重鎮の動きがそれを象徴している。

 その一人、上院共和党を率いる実力者ミッチ・マコーネル院内総務は、トランプ起訴以来、一切沈黙を守り続けている。同院内総務側近スタッフや報道官も、検察批判、トランプ支持含め頑として「ノーコメント」の立場を崩していない。

 マコーネル氏は、保守反動の言動が目立つマッカーシー下院議長らと異なり、党内では穏健保守の良識派として知られており、政治メディア「The Hill」は、「来年大統領選でトランプ氏が党指名候補になるかぎり、共和党の勝ち目はない」との判断の下に、トランプ氏と距離を置いているとの見方を伝えている。

 大統領選出馬に意欲を見せているマイク・ペンス前副大統領の言動にも、関心が集まっている。

 ペンス氏は、トランプ起訴が明らかになった当初こそ、他のトランプ派議員たちと足並みをそろえ、「検察のやり方は不当」とのコメントを出した。ところが、34にも上る起訴罪状内容と、起訴に至る検察側の論拠を説明した「告発事実論旨 statement of the facts」が公表された去る5日、手のひらを返したかのように、「連邦議事堂襲撃・乱入事件」を審理中の連邦大陪審での尋問に近く応じる姿勢を正式表明し、米マスコミで大きく報じられた。

 同事件が起こった2021年1月6日の当日、連邦議会では前年11月の大統領選投票結果を踏まえ、大統領選挙人獲得数の確認とバイデン氏当選の最終認証審議が進行中だった。しかし、その議長役を務めていたペンス副大統領に対し、トランプ大統領がホワイトハウスから直に電話を入れ、「バイデン大統領就任」を認めないよう直接働きかけたことが明らかになっている。


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