2024年11月25日(月)

バイデンのアメリカ

2023年4月11日

 こうしたことから、同事件解明のカギを握る重要証人として、大陪審でのペンス氏陳述内容に注目が集まる一方、トランプ氏は、ペンス氏に証人尋問に応じないよう重ねて要請していたことも米マスコミで報じられてきた。しかしペンス氏が、これを振り切って尋問受諾の決断を下したことは、来年選挙の予備選でトランプ氏に対抗していくハラを固めたことを示唆している。

トランプ支持層を刺激できない大統領選立候補者 

  トランプ氏起訴をめぐっては、このほか、共和党有力者の一人で、大統領選出馬予定のエイサ・ハッチンソン前アーカンソー州知事が、「今後の裁判結果いかんにかかわらず、トランプ氏は次期大統領としてふさわしい人物ではない。すべての判断は、法廷ではなく、投票所で有権者がきめるべきだ」と述べ、トランプ支持層の立場と一線を画している。

 共和党保守派実力者として知られ、16年大統領選出馬経験のあるテッド・クルーズ上院議員(テキサス)に近い戦略家のリック・タイラー氏は、Bloomberg(ブルンバーグ)通信記者に、「来年選挙を控え、わが党の政治家は、検察攻撃をするのではなく、トランプ起訴後の裁判結果を冷静に見守るべきだ」と論評した。

 かつて、トランプ氏とも親交のあったクリス・クリスティ元ニュージャージー州知事の側近も、トランプ氏がもみ消し事件以外にも今後、より深刻な刑事事案で訴追対象となっている点に言及した上で、「大統領選出馬を検討中の有力者たちは、現段階で、トランプ擁護の立場をとったとしても、いずれは来年予備選で彼を攻撃せざるを得なくなるだろう」と語っている。

 一方で、すでに大統領選出馬を表明しているニッキー・ヘイリー元国連大使は、トランプ起訴について、Fox Newsとのインタビューで「民主党側による政治的告発であり、法の下の公正に反し、〝報復〟の性格が濃い」と断じ、トランプ氏の立場に理解を示した。

 正式出馬した場合、トランプ氏にとって最も手ごわいライバルとなるとみられるロン・デサンティス・フロリダ州知事も、自らのツイィッターで「検察による起訴は、法をねじ曲げた政治的措置であり、反アメリカな暴挙」との談話を発表している。

 大統領選に向けて政治活動を活発化させてきたこれら有力者たちが、今回起訴に関する限り一様に、検察批判に回った背景には、党指名獲得のための予備選を戦い抜く上で、全米各州のトランプ支持層にいかに食い込めるかが、一つの重要なカギになるとみているからにほかならない。

 デサンティス氏が、トランプ起訴以来、選挙を意識した目立った政治活動を控えているのも、早期出馬表明することで、トランプ支持層を刺激することを避けたい狙いがある。

トランプでは政権奪回できない懸念も

 しかし、トランプ氏の置かれた立場に理解と同情を寄せれば寄せるほど、予備選レースでトランプ氏を優位に立たせることも事実だ。

 ただ、その結果、来年夏の党大会でトランプ氏が最終的に党指名獲得に至った場合、共和党首脳部の苦悩はかえって深まることになる。

 というのも、来年11月本選でトランプ氏が民主党候補と直接対決することになれば、むしろ共和党による政権奪回のチャンスは少なくなる、との判断があるからだ。


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