筆者は『世界の街角から東京を考える』(藤原書店)にも書いたが、パリの街を歩いて、ホームレスが多いこと、かなり低所得者らしき人たちが集まって住む地域があることを感じた。東京にはそういう地域があまりない。現地に行ってみて初めて気がつくことも多い。
国内の話だが、北海道のある自治体の幹部から夏季には日本の多くの自治体議員が視察に来るという話を聞いたことがある。涼しいから行くのだろうか。議員の視察が観光目的だと言われてしまう一因である。
現地では、議員だけで自力で行動すべき
議員の海外研修や海外視察の成果を挙げるための第三の条件は、目的地の空港についたら、自力で鉄道・バスまたはタクシーでホテルに移動することだ。迎えの車が来るような旅行を何回しても、その都市の本質がわからない。
議員だったら、公共交通機関を利用して、その都市の利便性と日本の都市の利便性を比較するところから、わが国のどこに重点投資をするべきか、実感するべきだ。そういう旅行を多くの議員がすれば、日本はさらによくなるだろう。
筆者は議員や官公庁、会社員、中小企業経営者を対象とする公共政策大学院で教えていたので、毎年何回かは彼らと一緒に海外視察を実施した。海外には何度も行ったという地方議会議員がいたが、なんと、飛行機が目的地の空港に着いて、ターンテーブルのところで自分のスーツケースを見つけて受け取る方法を知らなかった。議会の海外視察しか行ったことがなくて、そうしたことはすべて議会事務局の職員がやってくれていたのだ。自治体議会の海外旅行については、事務局職員の随行は一切やめるべきだ。
国会議員も、在外公館の人たちに身の回りのお世話をお願いしていないと思うが、国民の税によって運営されている大使館や領事館を私的に使うことはやめたほうがいい。むしろ、海外で生活していてどういう問題があるのか、どういう点が日本より優れているのかなど、海外勤務の日本人から率直な意見を聞くことが大いに意義のあることだと思う。
詳細な海外出張報告を公表すべき
筆者は数日前にニュージーランドのオークランドから帰ってきた。現地で総領事館を訪問して、総領事館の職員から現地の事情について話を聞いた。人口170万人のオークランド大都市圏がさらに人口を増やそうとしているにもかかわらず、地下鉄が未発達で交通渋滞が発生しているままバスと自家用車が主要な移動手段であることに以前から疑問を持っていた。
総領事館の皆さんと話し合う中でニュージーランドは元来、財政規律を重視する考え方であるという話が出て、なるほどと合点がいった。20世紀にニューパブリック・マネジメント(新しい行政経営すなわち小さな政府論)の考え方が日欧米を一時的に席捲したとき、ニュージーランドはその旗手のような役割を果たしていた。ニュージーランドは今でもそれを貫いているのだ。