再エネレントにもメスを入れよ
今回の贈収賄はそもそも非合法であり、徹底的な事実究明と犯罪行為の撲滅に取り組むべきなのは当然である。しかしこの問題はわが国の国民経済にレントという足かせを強いていることへの認識が重要である。汚職レントは数百億円規模であるが、再エネレントは更に大きく、21年時点で年間3兆円近くの巨額に上る。
再エネレントもレントである以上、競争はなくともレント縮小、解消に向けた絶え間ない努力が求められるべきであるのに、これまで再エネはカーボンニュートラルへの唯一の手段として「絶対的正義」と優遇され、どんなに高コストであっても拡大の一途を辿ってきた。今回の事件を契機に、再エネの導入コスト低減をきちんと進めていけるよう制度を再設計するべきである。
中国は既に太陽光も風力も、何なら洋上風力も世界最大の導入量となっている。中国では再エネについても買取価格はほぼ常に世界最低水準で進めてきた。
洋上風力について言えば、第1ラウンドの三菱商事コンソーシアムの秋田由利本荘海域の入札価格でさえ11.99円であったが、自然条件などが異なるのは踏まえたとしても、23年6月に入札が行われた中国の洋上風力の販売費用はkWh当たり0.2元程度、すなわち4円程度であった。日本政府は30年に洋上風力の発電コストを8~9円に低減させるという目標を掲げているが、彼我の差の大きさは圧倒的である。既に経済規模で4.4倍の大きさに成長した隣国が更にエネルギーコストの面で圧倒的に安価であったとすれば、日本経済は中国に対抗していけるだろうか。
再エネ議連顧問の河野太郎議員は消費者庁長官として、昨年12月の大手電力会社による家庭向け規制料金の値上げ申請に対して、多岐にわたる論点で値上げ幅を削り取ろうと並々ならぬ努力をしていたと記憶している。率直に言って、化石燃料の高騰を規制料金に反映させるという趣旨で本来テクニカルに進むはずの審査であったと思うが、河野長官は関西電力を中心とするカルテル問題、新電力顧客の名簿閲覧問題なども引き出して、大手電力の経営姿勢や元々の規制料金自体の効率性を問題視したのであった。結局、大手電力の規制問題は当初目指していた4月の値上げ開始から遅れること2カ月、更に値上げ幅も申請していたよりも小幅な値上げで決着させられることとなったのである。
こうした経緯を踏まえれば、カルテルも談合することで競争を排除し、割高な価格を維持しようとするものであるが、レントも同様の非効率性を持ったものである。再エネ議連の秋本議員の贈収賄という非合法な活動も発生したことでもあるし、大手電力と同様、再エネ関連企業や再エネレントを維持している制度も、消費者庁の立場で改めて厳しく追及する理由が多分にあると言えよう。大手電力会社を執拗に追い詰めた河野長官の消費者の利益を追求する姿勢が再エネに関しても発揮されることを大いに期待している。