こうした状況下、防衛省は2018年、18~26歳だった自衛官の募集対象年齢の上限を32歳にまで引き上げ間口を広げた。また、東京地本など全国の募集事務所では、再就職の不安などにより志願者数が減少し続けている任期制自衛官から、非任期で55歳前後の定年まで勤務する一般曹候補生の採用に募集の軸足を移し、大学と高校の新卒者から7割、転職者から3割を目標に人材の確保に汗している。
顕在化し始めた
人手不足のしわ寄せ
気がかりなのは、常態化した人手不足と厳しい募集環境、さらに自衛隊の任務が多様化する中で、現場の部隊の劣化を疑わせる事案が起きはじめていることだ。
山口県の周防大島沖で今年1月、試験運転中の護衛艦「いなづま」が浅瀬に乗り上げ、航行不能となる事故が発生した。小型漁船など多くの船舶が行き交う瀬戸内海で、「いなづま」の幹部は海図の確認も、周囲の監視も不十分なまま、時速55キロメートルという護衛艦の最大船速で航行していたのである。海自トップの酒井良・海上幕僚長は「航海の基礎的事項をおろそかにした」と深々と頭を下げたが、事故を聞いた元海上自衛隊幹部は「座礁してくれてよかった」と筆者に漏らし、「座礁しなければ、近くの漁船が護衛艦の引き波で転覆した可能性もあった」と指摘した。
さらに
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