投稿を否定するも世界的ニュースに
サットン氏は8月22日に自身のX上で「093型潜水艦が台湾海峡で沈没した」との情報を「真偽の程はまだ確認されていない」との警告付きで投稿したのだ。
サットン氏は最初の投稿の同日午後5時21分に投稿を削除し、「中国の潜水艦が行方不明になったとの報告に関する投稿を削除しました。これまでのところ噂を裏付ける説得力のある証拠は見つかっておらず(警告にもかかわらず)私の投稿が重視されすぎています。トピックは慎重に扱ってください」と自身でもあまりの反響の大きさに驚いているようだ。最初の投稿がポスト(ツイート)されたことについても「はい、不愉快になりました。私の警告は、特定の結果を求める人々には無視されると思います」と述べている。
サットン氏の予想通り、8月22日にすぐさま投稿を削除したにもかかわらず「タイムズ」を含む大手メディが軍事専門家からの情報として、中国原潜事故のニュースは次々と報じられたのだ。
フェイクニュースに踊らされる大手メディア
路徳氏が最初に報じた事故が起こったとされる8月21日は、習近平氏が南アフリカのヨハネスブルグで開催される新興5カ国(BRICS)首脳会議に出席するため北京を飛び立った日である。だが、習氏は演説が予定されていたにもかかわらず、首脳会議に姿を現すことはなかった。
習氏は国賓として南アを訪問し、8月22日にラマポーザ氏と会談していたと報じられているが、首脳会議には出席せず、王文濤商務相が声明を代読している姿はあまりにも奇妙である。この理由は明らかにされなかったため、習が事故対応に追われていたのではないかとされ、路徳氏の動画に信憑性を与えることになったようだ。
また、李尚福国務委員兼国防相は、8月29日に北京で開かれた「中国アフリカ平和安全フォーラム」への出席が確認されたのを最後に所在が掴めていないことも、この事故で責任を取らされたのではないかと見るむきもある。
8月22日、台湾国防部の孫立方報道官が定例記者会見で、「ネットに流れている中国原潜沈没の情報については何ら証拠を持っていない」と述べている。また、中国の国防部も8月31日に中国共産党宣伝部が発行する「經濟日報」で、「人民解放軍の原子力潜水艦は台湾海峡で事故を起こしましたか? 国防部がついに反応:純粋な噂」という見出しで、同日の定例記者会見で国防部報道官である呉謙氏が「関連ニュースは単なる噂であり、ネットユーザーが信頼できる情報に注意を払い、誘導されないことを望んでいる、と手短に述べた」と伝えている。