台湾や中国が「デイリーメール」の記事を公式に否定する中、「デイリーメール」の後追い記事を10月4日に掲載した「タイムズ」の記事も「国防省はデイリーメール紙の報道についてコメントを避けた」という書き振りなので、「デイリーメール」紙の引用で記事を書いているのではないかと思われる。
マスコミは他のメディアが報じたニュースを記事化するときは、そのメディアの名前と引用した記事であることを明示すべきだ。それが記者のモラルというものだろう。
何ら取材もしていない転載記事であるにもかかわらず、引用元も明示していない記事がフェイクニュースを作り出しているともいえる。中国の原子力潜水艦の事故は、現在までに「デイリーメール」以外の情報源はないのである。
それでも報じ続けるデイリーメール
「デイリーメール」のオンラインサイト「MailOnline」では、防衛担当編集者のマーク・ニコル(Mark Nicol)が10月6日にも「中国国外に拠点を置く反体制派は、中国共産党の調査のコピーを入手したと主張している」、「ある反体制派はデイリーメール紙に対し、中央軍事委員会から最新情報を入手したとして、機密報告書の中で、CCP(中国共産党)は、MI6が広東省司令部の海軍高官のApple Watchを盗聴し、093-417の事故情報を入手したと考えている」と報じている。
9月上旬に中国政府は中央政府職員に対してアップルのiPhoneをはじめとする海外ブランドの端末の公務での使用や職場への持ち込みを禁じたとの情報が報道されているが、アップル製品が盗聴されていたとすれば、このニュースにも信憑性を与えている。公式には、中国外務省の報道官が9月13日に、「われわれは常に外国企業に門戸を開いてきた。外国企業が中国の経済発展の成果を共有するチャンスをつかむことを歓迎する」として使用を禁止する法令は出していないとしている。
正解は数カ月のうちに出る
情報源が「デイリーメール」しかないことを考えると、今回の一連の報道は、情報戦の類ではなく、極めて典型的なフェイクニュースだと思われる。原子力潜水艦093-471号の母港は、山東省の青島にある海軍基地である。この海軍基地は原子力潜水艦の基地として知られ、米英など西側諸国が軍事偵察衛星で常時監視しており、093-471号が帰還すればただちにわかるはずだ。
潜水艦の任務期間は3カ月から6カ月ほど。この期間が過ぎても帰還しなければ、このニュースは本当だったことになる。真偽のほどを知りいたい人は、気長に待つことだ。