2024年12月2日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年10月27日

 Economist誌10月7日号は、7月の議会選挙で中道右派に敗れたスペインの社会労働党のサンチェス首相が、独立を目指す地域政党の支持を得て政権維持を図るために苦戦している状況について解説する記事を掲載している。要旨は次の通り。

2023年10月3日スペイン・マドリードのモンクロア宮殿で記者会見するペドロ・サンチェス氏(ロイター/アフロ)

 7月の選挙では、過半数を占める政党連合はなく、中道右派のフェイホー国民党党首は、9月29日の首相就任をかけた議会投票で敗れた。

 そのため、社会労働党のサンチェス書記長が国王の要請を受け、自らの過半数獲得を目指すことになった。しかし、社会労働党と急進左派Sumarの左派連合は、右派以上に過半数には遠く、スペインからの独立を望む5つの地域政党の支持を必要としている。

 その中には、2017年に違法な住民投票を支持したカタルーニャの2つの政党も含まれている。その首謀者の何人かは投獄されていたが、すでにサンチェスによって恩赦されている。

 現在、サンチェスは更に約1000人の恩赦を交渉中だ。特にプッチダモン元州首相は現在ベルギーに逃亡中であるが、自身の政党「共にカタルーニャのために(JUNTS)」が支持を提供する条件として恩赦を要求している。

 世論は恩赦反対53%、賛成37%である。国王から多数派形成を要請されるまでは沈黙を守っていたサンチェスは、カタルーニャについて「ページをめくる」好機だと述べた。

 しかし、カタルーニャの独立派政党はいずれも、これまでと同様に独立にコミットしている。JUNTSと「共和国左派(ERC)」は、民族主義の大義を主導する熾烈なライバルであり、両者は、サンチェスに対する要求を競い合っている。

 ERCのペレ・アラゴネス州首相は、恩赦それ自体では何の解決にもならないと述べた。ERCとJUNTSは、サンチェスに対し、新たな住民投票を実施するための実効性のある努力を約束するよう求める宣言を、州議会で承認させた。

 サンチェスがスペインの国政を担当したがっている一方で、彼が支持を必要とする政党はスペインの解体に躍起になっている。社会労働党は、分離主義者たちに反論し、彼らの声明は役に立たず、いかなる合意も(スペインの領土保全を保証する)憲法を尊重しなければならないと主張している。

 いずれにせよ、憲法裁判所は合意を破棄する可能性があるし、恩赦は多くのスペイン人を激怒させるだろう。また、サンチェスは法律を成立させるために、バスクやガリシアのナショナリストにも協力を求めねばらない。それでも彼は、行き詰まりを打開するための再選挙を行うよりは、そちらの方を選ぶかもしれない。

*   *   *

 7月の総選挙で、第1党となった国民党と極右ボックス党の右派連合は過半数の176票まで6票足りず、これを7つの地域政党が有する28議席のどこからか得る必要があったが、結局2回にわたる信任投票で172議席しか取れなかった。憲法の規定により、国王は次点に位置する社会労働党のサンチェス書記長を首相候補者に指名し信任投票を行うことになる。


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