7月23日のスペインの下院選挙では、中道右派の国民党が第1党となった。この結果につき、米ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)の同日付の社説‘Spain Turns Right, but Not Far Right’は、左派のみならず極右に対する勝利でもあるとして同党の政策を評価している。要旨は次の通り。
スペインの有権者は、7月23日の選挙で右に振れた。この結果は欧州にとっては良いことだ。中道右派が、主流派として、左派でも極右でもない信頼できる選択肢であることを示したことになるからだ。
左右のいずれの連合も過半数の議席を確保できないことから、新政権の形は依然として不透明だが、下院350議席のうち、フェイホー党首が率いる中道右派の国民党は136議席を獲得し、2019年の前回国政選挙の89議席から大きく議席を伸ばした。サンチェス首相率いる与党の社会労働党は122議席(4年前は120議席)を獲得したが、連立パートナーの極左スマール党は38議席から31議席に減少した。
国民党の大躍進は、最近の欧州では珍しい結果で、ギリシャで今春に中道右派が勝利した以外では保守主義は低迷していた。ドイツのキリスト教民主党は野党に甘んじており、おそらく英国保守党は2024年の選挙では負けるであろうし、フランスとイタリアには語るべき中道右派政党は存在しない。
国民党がそのような運命を回避できた手法は2つある。まず、投資とビジネス機会を促進する経済成長プログラムを提示し、サンチェス首相の左翼的な再分配政策との違いを強調したこと、そして、国民の団結と広範な中道向けの熟慮されたアピールを軸として国家の一体性を重視する文化的メッセージを採用したことだ。
フェイー党首は、極右のボックス党と連立を組む必要があるかもしれないが、必ずしも災厄とは言えない。フェイホー党首の成功の1つは、極右のボックス党の議席を4年前の52から33に減らしたことにある。これは、前回の選挙で同党に流れた国民党の支持者を取り戻す政策が功を奏したものだ。
ボックス党は、性やジェンダー、移民などに関し過激な保守的主張で注目を集めたが、その得票率の低下は、そうしたメッセージの一部しか有効ではなかったことを示唆した。国民党は、地域分離主義の抑制など、ボックス党の綱領のより主流派的な要素を共有することで前進した。
最終的な結論がどうなるか分からないが、この選挙で欧州の中道右派政党が1つ復活したことは、悲観するよりも喜ぶべきことだ。これらの政党は、極右の文化戦争的衝動を和らげる経済再生の主体となるべきだ。ギリシャと今回のスペインでは、それがまだ可能であることを示したのだ。
* * *
7月23日に行われたスペインの下院選挙の結果は、350議席中、右派連合は、国民党が136、極右ボックス党が33で、左派連合は、与党社会労働党が122、極左スマール(Sumar)党が31と、いずれも過半数の176には達せず、政権の見通しは今後の議会での多数派工作次第となり極めて不透明な状況となっている。