2024年7月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年8月8日

 しかし、残りの28議席の多くは、分離独立を主張するカタルーニャなどの地域政党であり、その中には右派政党もあるが議員の多くは地域分離主義政党に融和的な社会労働党を支持すると予想されるので、むしろサンチェス政権の続投というシナリオもあり得る。8月17日に議会の招集が予定されており、いずれかの連合が過半数の支持を得ない場合には、2回目の投票で単純多数で首相が選出されるが、与野党の議席数が極めて近接することから議会での対立が行き詰まり、いずれは再選挙となる可能性は高い。スペイン内政は、混乱し国内の分断が長期化、深刻化することが懸念される。

 従って、スペインの内政の今後は不透明であるが、明らかな敗者は議席を52から33に減らした極右ボックス党であるといえる。

 昨年のイタリアでの極右メローニ政権成立、フィンランドでの極右政党の政権参加、最近のスウエーデン、ドイツ、フランス、オランダなどでの極右政党の躍進や既存政党の右傾化などに加え、ボックス党の政権参加が実現すれば、欧州における右傾化の動きを更に加速するものだと懸念する報道が目立ったが、結果は、上記の社説の指摘の通り中道右派政党の復活の意義の方が大きいであろう。仮に、将来右派連合の連立政権ができたとしても連立内でのボックス党の影響力は限られたものとなると見られる。

バランスの取れた受け皿を用意した国民党

 国民党は、税制改革や規制緩和による投資促進などにより経済成長を目指すと共に、サンチェス政権が定めた急進的なトランスジェンダー保護法(例えば16歳以上であれば自己申告で性別変更できることなど)などには反対するも、同性婚など既に国民に受け入れられた政策については維持するとのバランスの取れた受け皿を用意することで、幅広く中道派の支持を得るとともに前回選挙で極右に流れた支持層も取り戻した。この結果は、他の国々の中道右派の参考となるかもしれない。

 右派勢力の復活の背景には、サンチェス政権の急進的なジェンダー法案成立とそのために議会内の支持を得るべく地域分離主義者に対し融和的な措置をとったことに対する国民の反発もあった。しかし、ボックス党は、男女平等やLGBTの権利拡大に反対、気候変動対策のパリ協定離脱、反移民、反イスラム、州の自治権停止、分離主義政党の禁止、フランコ時代の人権侵害見直し反対などその主張が過激すぎたと言える。選挙の最終局面ではむしろボックス党との連合が裏目に出て、極右の政権参加に対する懸念が結局は国民党の足を引っ張った可能性がある。

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