しかし、官僚機構の無謬性を守りたいがために、その失敗を認められないから、現行の社会保障制度の実質的な破綻に目を瞑り、弥縫策での対応に終始してきた。そんななかでは、社会保障制度が生み出す世代間格差の存在は不都合な真実でしかない。
世代間格差を指摘すると「社会保障制度は世代間の助け合いだ(から、世代間格差は存在して当然)」と問題の所在と影響を全く理解していないかのような紋切り型の批判しか返ってこないのも当然だ。
世代間格差解消策としての全世代型社会保障
ただし、実際には国も世代間格差の問題を認識はしているので、その対処策として出てきたのが全世代型社会保障である。高齢世代への寛大な給付にはほぼ手を付けず、代わりに現役世代への給付を増やすことで世代間格差の解消を図ろうとしたのだ。
しかしながら、高齢世代も現役世代も給付を受ける全世代型社会保障を維持するには全世代で等しく負担を分かち合う必要がある。そのため、全世代が広く薄く負担する消費税をメインの財源として期待され、2012年の消費税法改正において社会保障目的税として位置付けられた。この改正が「コンクリートから人へ」が叫ばれた旧民主党政権時代であるのも偶然ではなく必然なのだ。
社会保障を支えるための消費税というコンセンサスが少なくとも政府や財界にはある一方、国民の間では大平正芳内閣の一般消費税以降、とにかく付加価値税の評判はすこぶる悪く、現在にもそれが続く。その結果、本来は社会保障目的税と位置付けられる消費税で財源を賄うのが期待されているにもかかわらず、岸田文雄首相も早々に消費税の凍結を宣言したので、血眼になって消費税以外に財源を求めているのが現状だ。
結局、赤字国債頼み
しかし、経済の凋落と、異次元の高齢化、少子化が進行し、インフレも復活して利上げも射程に入ってきた日本にあっては、これまでのように赤字国債に依存するのは不可能なのは明らか。だからこそ、国防力強化にしても異次元の少子化対策についても増税が検討されているのだ。
そこで、先の社会保障審議会で検討された介護保険の例で言えば、所得の高い高齢者が狙い撃ちにされたという訳だ。これは、介護給付の約75%は高齢世代が受け、負担の約54%が現役世代であるため、高齢世代の給付は高齢世代が負担するという世代内再分配の強化と評価できるだろう。