2024年12月3日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年11月22日

 エコノミスト誌11月4日号が、ウクライナのザルジニー総司令官に対するインタビューに基づく記事を掲載、この中で、ザルジニーは反転攻勢開始から5カ月となるが、戦況は膠着状態に陥っていることを認め、長期的な消耗戦はロシアに有利に働くとして、事態打開のためにはドローンや電子戦などの分野でのテクノロジーの革新が必要と語っている。要旨は次の通り。

(Diy13/gettyimages)

 ウクライナのワレリー・ザルジニー総司令官は「われわれは第一次世界大戦の時とまさしく同様に、今日のわれわれのテクノロジーの発展の水準がわれわれおよびわれわれの敵を共に呆然自失の状態に置くことになっている」と分析、「この行き詰まりを打破するためには、われわれは何か決定的に新しいものを必要としている」と言う。彼はドローン、電子戦、砲劇制圧能力、地雷除去機器、ロボットの分野での革新を強く求めている。

 西側諸国はウクライナに最新のテクノロジーおよび最強の兵器を供給することに過度に慎重だった。バイデン大統領はウクライナが敗北しないよう、しかし米国がロシアとの対決に引きずり込まれないよう確保することに目的を定めた。このことはウクライナに戦いを維持せしめるには充分であったが、勝たせるには不足だった。

 ザルジニーは不平を言っている訳ではない。「彼らはわれわれに何か与える義務がある訳ではなく、われわれはわれわれが得たものについて感謝しているが、自分は単に事実を述べている」と彼は言う。

 しかし、ザルジニーは、武器(長距離ミサイル、戦車、F-16戦闘機等)の供与の遅延がウクライナの苦境の主たる原因ではなく、決定的なのはテクノロジーだと主張し、ドローンと電子戦の決定的な役割を強調する。ドローンであれ電子戦であれ、テクノロジーのブレークスルーが近いという徴候はない。しかも、テクノロジーにも限界がある。

 ウクライナは長期の戦争に陥っており、そこではロシアに優位性があることを彼は認めている。しかしながら、ウクライナには、攻勢を維持してイニシアチブを保つ以外に選択はないと彼は主張する。

 プーチンはウクライナのモラルと西側の支援の崩壊を当てにしている。長期の戦争はロシアを利することについてザルジニーには何の疑いもない。

 「ロシアは最も安価な資源が人間の命である封建国家だが、われわれにとって最も高価なものはわれわれの国民である」と彼は言う。目下、彼は充分な兵士を有しているが、戦争が長引くほど、それを維持することは難しくなる。

 「われわれはこの問題の解決策を探す必要がある、われわれは新たなテクノロジーを見つけ、迅速に使いこなし、素早い勝利のために使う必要がある」

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 ザルジニー総司令官の指摘の一つ目は、ウクライナの戦争は第一次世界大戦のような膠着状態(stalemate)に陥ったということである。それは軍事用語でいうところの「機動戦」とは対照的な固定的で消耗を強いる「陣地戦」である。

 15万の兵を失えば、戦いを止めるはずであるが、ロシアは違った。ロシアでは命の価格は安い。


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