2024年12月5日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年11月16日

 ワシントンポスト紙の10月13日付け社説‘The Pentagon’s new drone program would make even more sense with money attached’が、国防省が8月に発表したドローン調達計画は予算化してこそ意味があると述べている。主要点は次の通り。

(vadimrysev/gettyimages)

 最近、500ポンドの爆薬で装備されたウクライナの無人小型船舶が、遠隔操作の誘導システムにより黒海艦隊のロシア艦船を攻撃、無力化した。ウクライナの廉価なドローンは、ロシアの装甲車を探し出し、無力化するために使用されている。米国防副長官キャサリーン・ヒックスの計画が実現すれば、それは戦場の新機軸になり、国防契約業者の考え方も変えるだろう。

 8月下旬ヒックスが低コストで使い捨て可能なドローンの展開を目指す(「レプリケーター・イニシアティヴ」と名付けている)と発表した時、国防関係者や多くの議会の人々は驚いた。ヒックスは、「数千台」の自己推進型センサーや監視プラットフォームを製造し、ゆくゆく入手可能な技術を使用して武器を製造し、それらを次の2年間で実戦配備したいと述べた。この時間枠は、これまでの国防省の常識では考えられないほど速いものだ。

 ヒックスとオースティン国防長官は、この構想を6軍の全てで迅速に実現しようとしている。

 ヒックスは、数年で出来るはずの軍事調達が数十年にわたり延ばされる軍のやり方を「調達の死の谷」と呼んでいる。彼女は、国防省は「高価で」、「優れた」、調達数が少ない武器システムの開発には優れているが、今や、小型、スマート、安価で、調達が多数に上る武器の調達基盤を作る時が来た、と言う。

 この調達構想に対する国防ビジネス界の反応は、ヒックスが予算規模を明らかにしなかったので、懐疑的なものになったかもしれない。第一の措置は、まず行動を起こすことだ。

 米国はウクライナに数百万ドルの武器を供給しつつ、一方で専門家チームをウクライナに派遣、ウクライナから小型で、致死性のある、安価なドローンの製造方法を学び、昔流の技術移転をすべきだ。その知識を米国に持ち帰り、米国の必要性に合わせて再設計する。これを対ウクライナ支援に懐疑的な人々に示せば、最善の同盟は相互利益をもたらすと分かってもらえるだろう。

 米国の大学はどこもドローンの実験をしている人々がいる。ドローンの部品(多くは中国製)の入手が難しくなっているので、それらの部品の国家コンテストを始めたらどうか。多くの大学が喜んで参加するだろう。そうすれば長い間望まれた国防契約企業に対する競争が始まり、イノベーションは進む。

 ウクライナの現場でのイノベーションと中国軍の急拡大が、米国防産業複合体をその悪弊から覚醒させるかもしれない。結果を出すために、国防省は言葉に見合った金を実際に出す必要がある。

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 8月28日、国防副長官ヒックスは、国防産業協会での演説で、数千機の小型で、廉価なドローンを向こう18∼24カ月内に調達するという「レプリケーター・イニシアティヴ」を発表した。この構想を推進する理由につき、中国の軍事力の圧倒的な量的拡大に対処するためだと説明、具体的な搭載プラットフォーム等詳細は中国に情報を与えることになるとして明らかにしなかった。


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