国防省はこの計画について緊急性、迅速性を強調している。ヒックスは、「レプリケーター」は米国の基本的な軍事戦略を大型の武器システムから転換することを意味するものではなく、高価な、大型で複雑な、調達量が少ないシステムは大きな利益があり、彼我の軍事力を艦船や武器毎に相対させる戦略を取るものではない、とも説明した。この計画は、理屈に合っているように思える。
ウクライナ戦争やハマスのイスラエル攻撃を見ると、ドローンの威力と重要性を認識せざるを得ない。これらのシステムは、小型で廉価、市場で入手可能な技術で製造可能なものが多いようだ。
それは、ハマスのように非国家アクターでも容易に保有、製造できる。今後、戦争の敷居は益々下がるかもしれない。これは、今後低強度の紛争が増えることを意味する。
国家の軍事戦略の中で、ドローンを使う戦争遂行能力の重要性は高まる。世界の安定にとって良いことではないが、それが現実になっている以上、対応して行くしかない。
やるべきことは、当方も同様にドローンを保有することであり、必要があれば相手国への技術移転や半導体等不可欠部品の輸出を規制することであろう。
核抑止力にも影響
このことが、主として核抑止力で平和を何とか保ってきた戦後の抑止戦略(特に核抑止力)に如何なる影響を与えるのか、良く考えておく必要がある。ドローンは核抑止戦略に代わるものではないが、これまでの核の抑止力や大型の軍事力の妥当性や充分性に影響を与えるかもしれない。核抑止を弱めるかもしれない。
非核保有国が、ドローン保有を急拡大するかもしれない。戦争は、政治の一層容易な手段になるかもしれない。
ドローンの出現により世界は益々危険になる。それは核のように直ちに存立を危うくするものではないが、戦争に繋がる。
そうであれば、世界の平和と安定を確保するためには、今まで以上に紛争防止の努力が大事になる。そこで一番のリスクは、指導者の質かもしれない。
今の世界は多分に指導者が悪いから不安定化している。他国の指導者をコントロールするには、せいぜい相手と関与するしかない。しかし相互疎通を通じて相手を教育することはできる。
指導者を選び、コントロールできるのは、当該国の国民だけだ。そう考えると、やはり民主主義とそのあり方は平和と安定にとって重要だと言えるだろう。