ブラバーマンの更迭には誰も驚かなかった。彼女はかねて強硬な難民政策を推進するため、移民の「ハリケーン」、難民の「侵攻」、ホームレスは「ライフスタイルの選択」と語り、難民条約は時代遅れというなど、分断を煽る過激な言説を用いて来ており、彼女の更迭は遅過ぎたと思われる。彼女は、次期総選挙の敗北の後に予想される党首選挙に照準を定め、右派強硬派を基盤に党内工作を始めるのではないかとの観測がある。
キャメロンの外相起用には誰もが驚いた。何故、彼でなければならなかったのか理解出来ない。
彼の首相としての遺産は負の遺産である。最大のものはBrexitである。勝てると読んで国民投票の賭けに出て負けたという信じ難い判断の誤りだ。今や、Brexitは歴史的な失態とみられている。
在任中の緊縮財政も負の遺産である。国民保健サービス(NHS)のような公共サービスに対する投資が削減され、その悪影響が今に及んでいる。病院の長い診療待ち時間の問題がスナクを悩ませている。
外交では、2015年には習近平の英国公式訪問を実現し、英中関係の「黄金時代」を演出した。要するに、彼は過去の人である。
労働党と離され続ける支持率
閣僚に任ぜられるためには、議員である必要があるため、キャメロンは貴族院議員に急遽推挙された。なお、貴族院議員が外相を務めた例には過去にサッチャー政権のキャリントンがある。貴族院議員であるために、キャメロンは下院の討論に参加しないことになるが、これは不都合であるので、何等かの工夫を考えたいと下院議長が述べているとの報道がある。
来年中には総選挙となる。スナクは必死だと思われる。労働党に支持率で20%程度水を開けられている。
保守党が大敗した5月のイングランド統一地方選挙の得票率に基づくBBCの推計によれば、来るべき選挙での得票率は労働党が35%、保守党が26%とされている。この社説が指摘するように、キャメロンの起用はこの状況を転換する戦略が見当たらないことの反映であるかも知れず、せいぜい目先を変える効果にとどまるのではないかと思われる。