11月13日、英国のスナク首相は内閣を改造し、ブラバーマン内相を更迭する一方、キャメロン元首相を外相に起用したが、フィナンシャル・タイムズ紙の11月14日付け社説‘David Cameron’s return reflects a vacuum in strategy’が、この内閣改造はアイディアが尽きた政権の最後のあがきであり、キャメロン元首相の起用は戦略が見当たらないことの反映であろうと論じている。要旨は次の通り。
デビッド・キャメロンの外相への起用は、彼の首相退任の経緯やその後の問題のある行動にもかかわらず、少なくとも軽量級の現内閣に若干の重みを注入する。内相として扇動的で無能だったスエラ・ブラバーマンの追放は同様にプラスである。仮に、この改造がチームの質を高めるとしても、それはまたもや戦略を探し求めて苦しむ政府の方向転換である。
ブラバーマンの解任は遅過ぎた。彼女は日常的に醜悪な「犬笛政治」に関わって来た。左翼の抗議デモに対する依怙贔屓だとして警察を告発した、首相官邸の承認を得ないままのTimes紙への投稿は、公然たる反抗だった。彼女は内務省内で衝突し、英仏海峡を渡る「ボートを止める」こと、あるいは亡命を求める難民の取り扱いの改善について、ほとんど何も達成しなかった。
キャメロンとスナクは多くの政策で波長は合っていない。2010年、キャメロンは環境保全や同性婚に同調して保守党は「嫌な政党」との評を払拭することにより、保守党を再び政権に就けた。他方、スナクは彼の社会的保守主義においてブラバーマンの方により近いように思われる。
キャメロンは無難に首相の任務をこなしていると言われたが、勝てると信じたBrexitの賭けは歴史的な規模で跳ね返った。彼には外交でもほとんど成功はない。
彼が支持した11年のリビアへの介入はリビアをほぼ破綻国家とした。中国に対してはハト派だった。しかし、保守党は今や中国を増大する脅威と見ている。首相辞任後の金融会社Greensill Capitalのためのロビー活動は、彼の深刻な判断力の欠如として非難された。
キャメロンは保守党右派(ブラバーマンは彼らに担がれて先頭に立つかも知れない)と衝突することになるとみられる。内紛が燃え上がることは、スナクにとって中道の有権者を再び取り込み、首相としてのもう一期に備えた信頼に足るプログラムを有すると納得させることを困難にするであろう。いずれにせよ、多くの国民はこの内閣改造はアイディアが尽きた政権の最後のあがきと見るであろう。
英国の制度は選挙のタイミングについて政府に若干の柔軟性を認めている。首相官邸は、有りそうもない運勢の転換を希望して、出来る限りこのまま粘ろうとするだろうが、議会保守党の外の多くの人々は当然、国民がその見解を投票箱で表明する機会を得るのが早ければ早いほど好ましいと感じている。
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今回の内閣改造を引き金となったのは、スエラ・ブラバーマン内相が、ガザ危機に関連してロンドンで毎週のように行われているデモに関し「右派や国粋主義者のデモが過激化すれば取り締まるのに、親パレスチナの暴徒はほぼ野放しだ」――彼女は親パレスチナのデモを「hate marchers」「Islamists」と呼んだ――と警察の対応をダブルスタンダードだと非難する異様な一文を11月8日のThe Timesに寄稿したことにある。