和菓子屋を経営していては結婚相手との出会いもなかったと。悠作は怒りを爆発させる。「独身なのも俺のせいかよ」と。「兄貴は自分で精いっぱい好きなことを自由にやって、息子には自由がないのか」と、追い打ちをかける謙作だった。
笑いの中にも描く現代の家族
シャークスピア劇のなかでもコメディを演じるのが最も難しいといわれる。喜劇のうらには愛や涙がある。ドラマ「もみ消して冬~わが家の問題なかったことに~」(日本テレビ、2018年)や向田邦子賞を受賞した「俺の話は長い」(日本テレビ、2019年)などの作品で知られる、脚本家の金子茂樹はコメディを知っている。
万里江(小池)がひとりで母・清美(高橋)の家に泊まりにいく。布団を敷いてもらうと古いタオルケットが自分用に用意してあった。「これって、高校生のときに使っていたのじゃあない? 捨てればいいのに」という万里江に清美はいう。
「お前が忙しいときに小さかった順基を預かって寝かせるときに使ったのよ。そのタオルケットをかぶって泣いていたわ」と。
ドラマのタイトルにある「コタツ」は、かつての一家団欒を象徴しているのだろうか。現代の家族に必要なものはいったいなんなのだろう。
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