「コタツがない家」(日本テレビ、水曜よる10時)は、スランプに陥っている漫画家役に吉岡秀隆を配した傑作コメディである。独特の作風で知られる脚本家の金子茂樹の作品は、妻役の小池栄子、舅役の小林薫らがバラバラになりかけてはまとまろうとする、現代の家庭を巧みに描き出している。
数々の喜劇人との共演
吉岡秀隆ほど、映像作品のシリーズに恵まれた俳優はいないのではないか。映画「男はつらいよ」シリーズでは渥美清演じる寅さんの甥・諏訪満男役、渥美が体調を崩してからは実質的に主役となった。渥美亡きあとに過去の作品のコラージュと現実を組み合わせた、最終話第50作「お帰り 寅さん」(2019年)では作家となって初恋の相手役後藤久美子と共演した。
ドラマ「北の国から」シリーズ、「Dr.コトー診療所」シリーズ。「Dr.」は民放の無料サイトTVerで再放送中にもかかわらず、秋ドラマシリーズの最新作をしり目にベスト50に入っている。映画「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズの駄菓子屋を営みながら作家を目指す東京大学卒の茶川竜之介役も忘れがたい。
シリアスな作品からコメディまで幅広い演技力を誇る吉岡は、日本の喜劇人の脈々として受け継がれている血を筆者は感じる。「男はつらいよ」シリーズにおける渥美清、「北の国から」シリーズでの田中邦衛との出会いは幸せだったと思う。