2024年4月21日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年12月4日

 一つは、パレスチナの一般市民の保護、イスラエル人の人質解放、人道支援物資のガザへの搬入、そして休戦であり、さらに、バイデン大統領は和平交渉と二国家解決案の協議を再開することを追加している。しかし、戦闘の一時的な休止を挟んでも、ガザでの戦闘が長引くほど、アラブ側は、和平プロセスに関与することが困難になり、特にサウジアラビアは、イスラエルとの国交樹立が難しくなるだろう。そして、イランは、この戦争が泥沼に嵌まることで利益を得ている。

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 ヒズボラの指導者であるナスラッラー師の演説は、イスラム革命体制の護持のため米国との直接対決を望まないイランが、米国との交渉を望んでいるメッセージだったというガッタスの見方は興味深い。確かに、ナスラッラー師の演説がイスラエルと同じくらい米国についても言及していたのには違和感があったし、米国に対してイスラエルを止めろと要求しているのも奇異に思えた。

 この論説によれば、ナスラッラー師が1カ月間、沈黙を守っていたのは、米国がイスラエルの蛮行を止めるには数週間かかるであろうという読みからだとしているが、これもそう言われるとそうかもしれない。

 現在、イランは、その強気な見かけとは裏腹に困難な立場になりつつあると思われる。つまり、これまでイランはガザでの戦闘を終わらせなければ、イランとその代理勢力は黙っていられないと牽制していたが、徐々にイランは、「言うだけ番長」であることが分かって来ており、ナスラッラー師の演説は、その強気の言葉と裏腹にイラン側の腰が引けていることを決定的に曝け出してしまった。

 問題は、中東では面子を失う訳には行かないので、イランは、その挑発をエスカレーションせざるを得なくなるが、それだけ不測の事態が起きる虞が高まる。イランもリスクを取りたくないのでナスラッラー師の演説を通じて、米国に対してイスラエルのガザへの侵攻を止めさせるよう求めたという事では無いか。ここで米国がイスラエルを止めれば、イラン側も挑発の度合いを高めるというリスクを取らずに済む。

またも米国の覚悟うかがう

 他方、11月8日、ホーシー派が米軍の無人偵察機を撃墜したが、これにも大きな意味があるかも知れない。2019年、イランは、米軍の無人偵察機を撃墜してトランプ政権の出方を探ったが、トランプ大統領が報復攻撃を中止させたので、トランプ大統領は本気でイランと対決するガッツが無いとイラン側は見なし、一気に挑発の度合いを上げ、バクダッドの米国大使館がイラン系民兵に襲われるという事件が起きた。

 その後、突如、米軍がイランの革命防衛隊のソレイマニ将軍を暗殺したので、イラン側は驚愕した。イラン側はトランプ大統領の予測不可能性を分かっていなかった。イラン側は、再び米国側の覚悟を探るためにホーシー派に米軍の無人偵察機を撃墜させた可能性がある。

「特集:中東動乱 イスラエル・ハマス衝突」の記事はこちら

   
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