2024年12月2日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年12月5日

 フォーリン・アフェアーズ誌(Web版)が11月10日付けで「誤解されている中国の核増強」(China’s Misunderstood Nuclear Expansion)と題するMIT安全保障担当ディレクターのフラベルらによる論説を掲載している。概要は次の通り。

2019年10月1日大陸間戦略核ミサイル「東風41」の編隊(新華社/アフロ)

 数十年の間、中国は、比較的小規模の核戦力を維持することで満足していた。2020年においても、中国の核兵器の数は、約220とそれ以前と大きく変わらず、米国やロシアの核弾頭の保有数(配備済みと予備を合わせたもの)の5~6%に過ぎなかった。

 その後、中国は核軍備を急激に拡大し、近代化した。20年に中国は、300基の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を収容する三つのサイロの建設を開始した。

 15年以降の中国側の文献を検討してみると、中国の核増強は、中国側の意図の変化によるものというよりは、中国側が米国の核戦略の威嚇的な変化と捉えたもの(とりわけ18年の核態勢見直し(NPR)で示された米国の戦略の変化)への懸念を反映していることが示唆される。

 中国は、米国が攻撃的兵器と防御的兵器の双方で、中国の核抑止力を無効化しようとしているのではないかとの懸念も持った。前者は、米国が中国の核兵器を攻撃できる新たな通常兵器を開発する可能性である。後者は、米国のミサイル防衛の強化が中国の「確証破壊」戦略を無力化することへの懸念である。

 中国の核増強は、米国の能力増強に直面して、中国側が脆弱性と不安をますます強く感じていることによってかき立てられていると言える。一方、中国の核戦力が量的に拡大し、多様化することは、中国が報復攻撃を越えるオプションを持つことにもなる。

 米中間で軍備管理における飛躍的前進はありそうにないが、エスカレーションを避けるための措置はあり得る。中国側としては、自らの核態勢と核増強の理由付けについて透明性を高めることであり、米側としては、自らの核態勢とミサイル防衛努力が中国の危機認識に繋がっていることを理解することである。一方、残念ながら、米中間の対立関係と台湾を巡る緊張からすれば、これらを実現することは容易ではなさそうだ。

 中国の指導者にとって、中国の核の近代化努力は防御的なものであっても、米国の政策決定者と戦略家はこれに対して強い対応、すなわち核の増強を求めている。しかし、そうした措置は、おそらく間違いなく、中国を更なる核増強に駆り立てるだろう。


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