2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年10月14日

3)慣習国際法を修正すること。米国といくつかのASEANの国々の間でEEZを含む公海上での軍事活動について立場が異なっている。また、海軍監視活動についても一部解釈が異なっている。

4)中国の海洋拡張主義や独善的主張について、米国、ASEANともにもっと明確にその懸念を表明しなければならない。中国とASEANの間での南シナ海における行動規範の策定は、歓迎されるべきである。ただし、中国は結論を出すことを急いでいないように見える。米国としてはそれらの規範が米の大きな政策目標に合致するよう、ASEAN諸国とより緊密に協力すべきである。

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 この論説は、今日のASEAN10カ国の強みと弱みを論じています。具体的には、ASEANは、平時には一体となって行動しやすいのですが、安全保障上の緊急時には簡単にまとまることが出来ない、ということです。

 ASEANは、カンボジア紛争終了後、最近の中国の海洋拡張主義に直面するまでの約20年間、比較的平和な時期を経て来ました。その間には、「自分のゲーム」を行うことが出来たように見えます。しかし、それは困難な決定を避けてきた結果でもあります。今後は、中国の強硬姿勢に直面して、やがて米中いずれかの側により強く傾斜せざるを得ないという事態に追い込まれるかもしれません。

 今日、ASEANとしては、いざという時には米国の支援に期待するところが大きいでしょうが、そのためにも米国の「アジア回帰」がいかなるものか、米国自身の腰の据わった政策を注視しているという段階でしょう。

 ローマンがフィリピンのケースに関連して指摘するように、ASEAN諸国が中国と交渉を行うに当たっては、法的規範(ここでは国連海洋法条約)に照らして合法か、非合法かを問うという対応をとることは正攻法であると思われます。これは、日中間についても当てはまることです。

 南シナ海をめぐる中国・ASEAN間の行動規範の策定において、中国がどこまで妥協する構えであるのか、いまだ判然としませんが、海洋強国を目指すという中国の国家戦略を考えれば、中国側の大きな譲歩を期待することはできません。行動規範策定のための議論を、時間稼ぎの道具に利用されないよう、気を付ける必要があります。

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