来年1月13日の総統選挙を控えて、台湾の政治状況は大きく揺れ動いている。なかでも、野党・国民党と民衆党の候補者「一本化」が出来るかどうかが、大きな注目点であった。国民党・候友宜(前新北市市長)と民衆党・柯文哲(前台北市市長)の間で「一本化」のための交渉が行われたが、届け出日までに結局、交渉は成立しなかった。
他方、与党・民進党からの候補者は頼清徳(蔡英文政権の現副総統)であり、これから三者の間で、三つどもえの選挙戦が行われることとなる。11月24日の締切日までに野党の「一本化」が出来なかったことから、これから与党民進党・頼清徳にとって有利な展開になるのではないかとの見方が強まりつつある。
これら一連の動きについてのTaipei Times の記述には憶測に類するものもあるが、的を射たものも多い。
国民党と民衆党との間で、いずれを野党共闘の主人公とするかについて結論が出せなかった段階で、元総統(国民党)であった馬英九を入れて協議が行われた。馬はこの時の協議の「仲介者」という立場であり、国民党の侯友宜により近い立場で、この「一本化」のための仲介を行ったものと考えられる。この馬の仲介の結果、侯友宜と柯文哲の間の妥協が成立したかに見えた。
しかし、この協議の結果に民衆党の支持者から異論が続出し、柯自身も「自分はもともと蚊やゴキブリや国民党は好きではない」と言っていたこともあり、この協議はご破算になったという。
中国が選挙動静に牽制
目下の段階での複数の世論調査の結果をみれば、総統候補として頼清徳を挙げるものは、30数%、侯友宜20%、柯文哲20%となっている。また、頼清徳は自らの副総統候補として最近まで駐米台湾協会(AIT)代表であった蕭美琴を指名した。
その他、無所属の出馬に必要な署名を集めた台湾の大手企業・鴻海精密工業の創業者・郭台銘は不出馬を発表した。支持率の低迷以外に、中国当局が鴻海の現地企業を税務調査し、圧力をかけたことも、同人不出馬の背景にあるのではないかとの憶測が流れていることは注視に値する。
中国で台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室は11月24日、台湾野党が総統選候補の一本化に失敗したことを受けて、「台湾は平和か戦争か、繁栄か衰退かという選択を迫られている」とする報道官コメントを出し、民進党政権の継続を牽制した。
他方、民進党の頼清徳は談話の中で「台湾を引き続き安定した道に乗せ、国際社会の中に入っていく」とし、「一つの中国という古い道に後戻りしない」として、蔡英文下の現状維持路線を踏襲するとの決意を述べている。