すぐには民主化しないロシアとの付き合い方
クリンゲンダール研究所は以上のような専門家の議論を整理して公表し、EUとNATOの当局者に対して政策立案を促している。「ロシアの将来」というテーマが欧州にとってはほとんど運命的に重要だからだ。筆者の私見ではこの手の研究作業は今後欧米社会で増えていくに違いない。
翻ってロシアが今後どうなるのかは隣国たる日本にとっても当然大きな問題だ。ウクライナ戦争の結果、ロシアの将来、その政治形態と経済、それに外交姿勢などはユーラシアからアジア・太平洋に至る広汎な地理的範囲に大きな影響を与える。
当然、日本においてもその観点から、官民の専門家の間でクリンゲンダール研究所と同じような作業が行われるべきだ。広く米国や韓国、豪州、ニュージーランド(NZ)等の官民の専門家・研究者を糾合して、場合によっては中国の専門家も交えてこの議論が始まるように期待したい。
なお、このオランダの研究所の研究によれば、上記の通りロシアの民主化は「短期的には本格的な民主主義国家になる可能性は非常に低い」としている。筆者も同感だ。
民主化がすぐできるとは思わない。それに民主化しないと物事が動かないという訳でもない。
唯一、新生ロシアが近隣諸国への武力侵略や武力による威嚇を慎む政策を取れば、欧米や日本などの民主主義国側はロシアの国内体制が専制主義的であっても受け入れて共に進んでいくだろう。専制強国中国の指向する方向性に鑑みれば、そうすることの方が明らかに得策だからだ。
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