海運、造船業界幹部が、第2次世界大戦で壊滅状態となった企業を再建するため、利子補給法の制定を訴えて、政官界に賄賂を贈ったのは1954年の造船疑獄。業界、官界から70人以上の逮捕者を出した。
東京地検は、当時の与党、自由党の佐藤栄作幹事長(当時、後首相)を逮捕しようとしたが、犬養健法相(当時)が検察庁法14条に基づき検事総長に対して逮捕を見合わせ、任意捜査を継続するよう指示。キーパーソンの逮捕見送りで、事件は挫折してしまった。
これこそが、悪名高い「指揮権発動」だ。現在でも、永田町を舞台とする事件の際に、その発動の懸念がとりざたされる。犬養法相はその責任を取って辞職し、5次にわたった吉田茂内閣が終焉を告げる遠因になった。
「はしゃぎすぎた」三木内閣の教訓
話を安倍派のパーティー疑惑に戻す。
議員本人を含む取り調べ、事情聴取の内容はもちろんつまびらかではないが、さまざまな報道がなされている。
背景をめぐっては、検察当局が、安倍派の不正処理への告発がなされたことを好機として、同派への意趣返しにでたなどと真偽不明の憶測がなされている。検察は、故安倍元首相が、検事総長人事に介入したことに対していまでも不快感を持っていると伝えられたことが根拠になっている。
岸田首相が安倍派の閣僚を更迭したことについても、やはりこの問題を利用して、安倍派の影響力排除をねらったなどともうわさされている。真相はどうあれ、また、首相が自覚しているかも判然としないが、はっきりしていることは、展開次第では、岸田政権も無傷ではすまないということだろう。
真相解明に積極的だった三木首相が、逆に「はしゃぎすぎ」で足を取られてしまったロッキード事件の皮肉な結末を、よもや忘れまい。
連載『「永田町政治」を考える』の記事はこちら。