2024年12月9日(月)

Wedge OPINION

2023年9月25日

 円安が終わらない。2023年上半期(1~6月)を振り返れば、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ幅縮小、停止、利下げ観測の台頭に加え、日銀が実質的にイールドカーブ・コントロール(YCC)を解消するなど、内外金利環境は22年に比べれば明らかに円高を支持したが、円安相場は終息しなかった。これは金利ばかり見て相場を語る旧来的なアプローチの敗北に思える。

 確かに、従来は日米金利差(端的には米金利)を追うことでドル円相場の軌道は一定程度読むことができたが昨年来、筆者はそうした時代はある程度終わった可能性があるとの立場を貫いてきた。年末年始時点で円安予想だったのは筆者を含め、極めて限られた市場参加者であったと記憶する。

 円相場を考える上では内外金利差に加え、需給構造の変化を考慮する重要性が大いに増している。確かに23年に入ってから経常収支や貿易収支といった日本への外貨流出入を示す統計の改善が再三報じられている。包括的な外貨の需給動向を示す経常収支を見ると、23年上半期で約8兆円と前年同期(約7.2兆円)から増加している。

円安の動向は日米金利差だけではなく、キャッシュフローにも注目するべきではないか(PASHALGNATOV/GETTYIMAGES)

 だが、こうした経常収支の改善傾向と円相場の動向は全く噛み合っていない。周知の通り、23年は年初来、円安が続いているからだ。ちなみに円安で大騒ぎした22年も経常収支は通年で見れば11.5兆円の黒字だったが、それでも円は対ドルで最大マイナス(以下、▲)30%以上も下落した。仮に日本の経常黒字が数字通りの円買い圧力となるならばここまで円安にならないはずだというのが筆者の問題意識である。

 なぜ経常黒字を抱えながら円安が続くのか。経常収支と為替の関係を考察する上では統計上の数字よりも、実務上のお金の流れ、いわゆるキャッシュフロー(以下、CF)の仕上がりが重要になる。以下ではこれを検証する。


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