2024年11月25日(月)

Wedge REPORT

2023年12月22日

 新型コロナウイルス感染症による経済活動への支障がほぼなくなり多くの月日が経ったが、その影響はいまだ見え隠れする。コロナ下で導入された中小企業向けの実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」では、約1兆円もの回収不能もしくは回収困難な不良債権になっていると会計検査院が指摘。倒産件数も前年を上回る数字が続いている。

(Koji_Ishii/mapo/gettyimages)

 日本経済は今後、どうなるのか。金融論が専門の東洋大学国際学部の野崎浩成教授は「廃業が悪いことではなく、経済の新陳代謝として必要。重要なのは今後の事業を導くこと」と指摘する。企業の強い経済活動に向けては、〝失敗が許されない〟という日本の固定観念を変えることなのかもしれない。その処方箋を金融機関の役割を中心に聞いてみた。

ゼロゼロ融資の本質的問題

 会計検査院が11月に公表した検査報告によると、政府系金融機関である日本政策金融公庫(日本公庫)と商工組合中央金庫(商工中金)が22年度末までにゼロゼロ融資などコロナ関連の特別な貸し付けは118万件で19兆円にのぼる。このうち、697億円が回収不能として「償却」され、回収が困難な「リスク管理債権」とされた債権が8785億円、実質的に回収不能となり「部分直接償却」されたのが1246億円としている。

 ゼロゼロ融資は、コロナ禍で売上高が減った事業者に対し実質無利子・無担保で融資する仕組み。20年3月から政府系金融機関で始まり、同年5月からは民間金融機関も参入していた。新規受け付けは22年9月まで行われ、融資総額は約43兆円にも上り、返済が本格化していた。今回の会計検査院による検査は政府系金融機関を対象としており、民間金融機関も合わせれば、焦げ付きはより大きくなるとみられる。

 こうした状況について、野崎教授は「コロナ禍でストップしてしまった経済活動による倒産を防ぐため社会政策的に国が実施を決め、銀行がそれに伴い融資してきた。予想できた動き」と指摘。「当時の金融機関の審査能力を責めるべきではなく、これからの動きが重要となってくる」と見る。

 この「これから」というのは、どういうことか。それは、「会社を続けさせるべきか、一部の事業だけでも継続させるべきか、退場させて新たな道を模索させるべきかを選別する目」だという。


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