2022年9月27日(火)

Wedge REPORT

2022年8月31日

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野崎浩成 ( のざき・ひろなり)

東洋大学国際学部 教授

1986年慶應義塾大学経済学部卒業、91年米エール大院修了。あさひ銀行、シティグループ証券などを経て、18年から現職。著書に『消える地銀 生き残る地銀』(日本経済新聞出版)。

 「多すぎる」と指摘される地方銀行。淘汰されないためにはどのようなことが必要になるのか。金融論が専門の野崎浩成・東洋大学教授に聞いた。
聞き手/構成・編集部 友森敏雄
y-studio / iStock Editorial / Getty Images Plus

 最近、ある地方銀行の関係者から、若手行員が銀行を辞めて、地元の自治体に再就職したという話を聞いた。せっかく地銀に入って地元に貢献したいと思っていたら、そのような仕事がなかなかできないという、描いていた仕事像と実際とのギャップが辞めた理由のようだ。

 変革が求められる地域の金融機関だが、最も難しい立場にあるのが「地銀」だ。信用金庫や信用組合であれば、会員や組合がそのまま顧客であるが、地銀の場合、株主と顧客の両方のバランスをとらなければならない。株主にとっては毎年の「収益」が重視されるが、地域にとっては中長期的な視点にたった事業や雇用の継続のほうが重視される。こうしたスタンスの違いから、地銀は時に板挟みになることがある。

 特に地銀に求められるのは、株主資本利益率(ROE)が、自分たちの「ミッション」に本当に見合うのかどうかを見直さなければならないということだ。特に先の見通しが難しいポストコロナに向けて、10年といった長期的視点に立った重要目標達成指標(KGI)をつくることが求められる。

 例えば、奈良県の南都銀行は「奈良県の国内総生産(GDP)10%増加」を掲げた。このような目標設定は、メッセージとして非常に分かりやすく、地銀にとってはこのような「表現」をすることが第一歩になる。

 また、地銀の数が議論されることが多いが、単純比較すると、米国のほうが日本よりも7倍程度銀行の数は多い。つまり、数そのものが問題なのではなく、自分たちのミッションを達成するための規模がどの程度なのかを考えるべきだ。再編して数を減らしてしまえば問題が解決するということではない。

「ゼロゼロ融資」の終了

 コロナ対策として2020年3月からスタートした無担保、3年間は実質金利ゼロのいわゆる「ゼロゼロ融資」が終了する。融資残高は42兆円(21年末)にも上る。この政策自体は、緊急事態のため仕方がなかった部分もあるが、これから地方金融機関に求められるのは、端的に言えば「雨の日に傘を貸さぬも親切」という姿勢だ。問題を先延ばしにして赤字を拡大することは許されない。

 もし、持続可能性(付加価値)のある会社があるのであれば、その情報をストックして、引継いでくれる会社や人とつなげる必要がある。お金を回すだけではなく、情報を回していく「情報産業」としても金融機関は力を発揮していかなければならない。

 もう一つ、コロナ禍の影響で懸念されるのは顧客との「対面」が制限されたことだ。このため、新入行員が顧客企業を先輩と訪問して、世間話の仕方から学ぶという機会が減った。財務データだけを見て融資の可否を決めるのであれば、もはやAIに任せておけばよいことになる。こうした銀行員の「伝統芸能」といっても過言ではない仕事については絶やすことなく磨いていく必要がある。

 
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