2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2024年1月12日

 ただ、新産業の発展だけでは景気は回復しない。足元の不景気に対応するには財政出動や金融緩和による需要創出と、今後も中国経済は成長するという予期の回復が不可欠だ。

 というわけで、「そんなことより、イノベーションすごいだろ」と言わんばかりの新年のあいさつは、ちゃんと景気対策をしてくれるのかとの不安をかきたてるものであった。

経済重点目標から見る習近平の〝本質〟

 新年のあいさつの3週間前に発表された中央経済工作会議のコミュニケでも同じ不安が取り沙汰されていた。同会議は毎年12月に開催されており、翌年の経済方針や目標を決定する重要なイベントだ。

 ここでの決定が肉付けされて翌年3月の全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)で発表されるという流れである。中国共産党が今、何を重視しているかを読み取ろうと、多くの企業家や研究者、メディア関係者がコミュニケを熟読する。

 ただ、このコミュニケを理解するのはなかなかに大変だ。もっとも注目されているのが、定調と呼ばれるスローガンである。今年は「穏中求進、以進促穏、先立後破」(安定の中で前進し、前進によって安定を求め、まず新しいシステムを確立してから後に改革する)であった。昨年の「穏字当頭、穏中求進」(安定を第一とし、安定の中で前進する)と比較して、この変化を読み取るのはひたすらに難しい。かくいう筆者も初見ではよく理解できなかった。

 抽象的な表現に加えて総花的にさまざまなトピックを盛り込んでいるので、どこが重点なのか、昨年までと何が変わったのかを理解するのも大変だ。科学技術イノベーションに関する項目も足元の景気対策もどちらも盛り込まれている。なので、専門家の評価もかなりバラけている。果たして足元の景気軽視の「生産力お化け」路線を突っ走っているのか、それとも妥協して安定重視の路線となったのかをどう見極めるべきか。

 本稿では、少しでも客観的な判断材料を得るために、コミュニケで提起された重点目標を見てみたい。中央経済工作会議では毎年4から9項目の重点目標が発表されるが、この1番目に提起された課題を見ることで、習近平総書記と中国共産党が「経済分野で一番気にしていること」が読み取れる。習近平総書記が誕生した2012年以後の12回のコミュニケからまとめた。

2012年 マクロコントロールの強化と改善により経済を持続的かつ健康的に発展させる

13年 国家の食料安全をしっかりと保障する

14年 経済の安定成長維持に努める

15年 積極的かつ穏当に製造能力過剰を解消する

16年 「三去一降一補」(製造能力過剰、不動産在庫、レバレッジの削減、コスト引き下げ、脆弱産業の支援)を深く推進する

17年 サプライサイド構造的改革の深化

18年 製造業の高品質の発展

19年 新発展理念(イノベーション、協調、エコ、開放、シェア)を迷うことなく貫徹

20年 国家の戦略的科学技術力を強化

21年 穏健かつ有効なマクロ経済政策

22年 国内需要の拡大

23年 科学技術イノベーションが牽引する現代化産業体系の建設


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