2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2024年1月12日

 12年から14年は経済安定という前政権と同様の路線が続いている。習近平総書記の独自色が出るのはその後で、15年から19年にかけては製造能力過剰の解消や制度改革を主眼とした「供給側改革」(サプライサイド改革)が主眼に置かれた。労働力、土地、資本の市場化を徹底すること、制度改革やイノベーションを通じて供給力を高めることを主眼とした政策である。

 この政策は20年には生産要素の市場化改革へと継承されている。こちらでは労働力、土地、資本に加えて技術とデータの市場化も組み込まれた。

習近平の嗜好に国民はついていくのか

 そして20年から現在にかけては科学技術とコロナ対策のせめぎ合いが続く。重点目標に科学技術が単独で取りあげられるようになったのは20年が初だ。今後の生産力向上は科学技術を軸とした新産業が牽引していくとの決意を示した。

 本来ならば、サプライサイド改革と同様に毎年、重点目標第1番にしたかったのだと推測するが、新型コロナウイルスの流行がそれを許さなかった。デルタ株流行で経済が混乱した21年は1番がマクロ経済対策、2番がミクロ経済対策、3番が経済構造改革で、科学技術は4番になって登場する。オミクロン株大流行でロックダウン頻発、ゼロコロナ政策撤回に追いやられた22年は足元の経済対策への注力が1番目、科学技術が2番目という並びだ。

 昨年12月はコロナ大流行がどれだけのダメージとなるのかという不安はあったとはいえ、あくまで一時的な危機との認識だった。今年はそれほどの混乱はないとはいえ、このままずるずると下降トレンドを描くのではという中長期的な悲観論では昨年以上にシビアな状況とも言える。その中で再びイノベーションを重点目標1位に持ってきたことには、やはり習近平総書記の趣味嗜好が反映されているのは否めないのではないか。

 習近平総書記の政策には誰も異論は唱えられないが、設備投資や不動産販売の減速といった、実際の行動で反対を表明することはできる。政権が明確に方向転換しないかぎり、無言の反対はなかなか止まらないのではないか。

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