2024年5月10日(金)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2024年1月23日

日本が逃したチャンス

 日本でも輸入しているノルウェーでは、ズワイガニの資源量が増え続けています。24年の数字は漁獲実績ではなく漁獲枠ですが、前年比で3割も枠が増えています。ところでノルウェーには、もともとズワイガニはいませんでした。ところが1996年に初めて資源が発見されました。

 その後15年以上待って、ようやく2012年から漁獲を開始しています。上のグラフでわかる通り、資源管理の成功で、もともとズワイガニを漁獲していたわが国の漁獲量を追い越しています。そしてさらに差が広がっていることがわかります。

 ここでハッキリ言えることがあります。それはノルウェーでは日本と異なり、メスのズワイガニを漁獲していないということです。

 ところで日本では、昨年北海道でズワイガニ(オオズワイガニ・バルダイ種)が多く発生してニュースになりました。ところがノルウェーでは資源確認後に15年以上待って漁獲したのに対し、わが国では、せっかく派生した貴重な小さなズワイガニを、どんどん獲って市場に供給していきました。

 ズワイガニにはオピリオとバルダイという2種類があります。アラスカでは資源量が低下したため、22年~23年の漁期から、オピリオ種を禁漁として資源回復を待っています。一方ではバルダイ種に関しては漁業を継続していますが「間違っても」日本のように小さなバルダイ種を漁獲してしまうことはありません。残念なことに数年も経たないうちに、この貴重な資源は乱獲で潰されてしまうことでしょう。

 筆者はこういったズワイガニの資源を、日本で国際的な視点(常識)から俯瞰して紹介されているのを見たことがありません。時間の経過と共に資源量が減って漁獲量が減っていきます。そして将来必ず「なぜメスのカニを漁獲していたのか!」「なぜ小さなカニを獲って千載一遇の資源回復の機会を逃したのか!」と後悔することになります。しかし時計の針は元には戻りません。

 そこで手遅れになる前に、一人でも多くの方に、サステナブルになっていない水産資源の問題に気付いていただけたらと思う次第なのです。

連載「日本の漁業 こうすれば復活できる」では、日本漁業にまつわるさまざまな課題や解決策を提示しております。他の記事はこちら

   
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