2024年2月21日(水)

オトナの教養 週末の一冊

2024年2月12日

 糖質さえ食べなければほかはいくらでも食べられ、酒も飲めるのに短期間で痩せられる。あまり我慢しなくてよい糖質制限は、それまではありえなかった前代未聞の画期的ダイエット法として急速に注目を集めていった。

「糖質制限食こそが人類本来の食生活」との主張

 それでは、どうして主要なエネルギー源であるはずの糖質を摂らずに元気でいられるのだろうか?とくに脳はブドウ糖だけをエネルギー源にし、頭を使って疲れたとき甘いお菓子を食べるのは自然な生理現象とされてきた。

 ところが、糖質を摂らなくなると体内の脂肪酸が分解されて、副産物として作られる「ケトン体」がブドウ糖のかわりにエネルギー源として働きだし、脳も利用することができるという。体はうまくできているものだ。

 ケトン体を活発に作動させると体脂肪が燃えやすくなり、より痩せやすくなる。そこに着目して、海外で糖質制限は「ケトジェニックダイエット」、略して「ケトダイエット」と呼ばれている。

 何より糖質制限がユニークなのは、大前提として、人間の体は穀物食には適していないと考えることにある。700万年の人類進化の歴史のなかで、穀物を食べるようになったのは農耕がはじまってからのたった1万年にすぎず、それまでの狩猟採集生活では、動物性たんぱく質と木の実、野草、果実を中心に食べて暮らし、血糖値の上昇とブドウ糖スパイクとは無縁だったとする。

 農業の発明で人類は穀物を食べはじめたが、その年月は進化の歴史のなかでは短く、人類の消化システムはまだ穀物食に適応していない。すなわち、糖質制限食こそが人類本来の食生活というわけだ。

 明治時代に人類は本来、穀菜食動物だから肉食する必要はないと説き、食養運動をはじめた石塚左玄が聞いたら、どう反論するだろうか。左玄の思想を受け継いだ「粗食」を提唱した幕内秀夫は、2014年に『世にも恐ろしい「糖質制限食ダイエット」』(講談社+α新書)を出して対抗した。

 帯の文言は「美食家で大酒飲みのメタボ男性しかできない『道楽健康法』に女性と子どもを巻き込むな!」。めったにないほど激しくて辛辣なコピーである。


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