2024年11月22日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2024年2月12日

本記事は著書『熱狂と欲望のヘルシーフード』(ウェッジ)を一部再編集したものです。

 糖質と聞くと、甘い食べ物のことだと思われて当初、「甘さ控えめの食生活」と誤解されがちな糖質制限だったが、人気作家の宮本輝がさまざまなメディアでその理論と絶大な効果を語ったことで認知され、テレビのワイドショーや健康バラエティー番組でも取り上げられるようになった。長患いから解放されてよほど感激したのだろう。宮本は、糖質制限を提唱した内科医の江部康二との対談本『我ら糖尿人、元気なのには理由(ワケ)がある――現代病を治す糖質制限食 』(東洋経済新報社)も出している。

(ADragan/gettyimages)

 今日、もはやダイエットの定番になった感のある糖質制限だが、あらためて考え方、やり方をおさらいしてみよう。なお、本記事の糖尿病に関する記述は前回に続きすべて2型に関してである。

主食さえ抜けばなんでも食べられる、前代未聞のダイエット

 まず、糖質とはなにか? 炭水化物=糖質と思われがちだが、実は3大栄養素のひとつである炭水化物には、糖質と食物繊維の2種類を合わせた総称である。

 糖質は体の主要なエネルギーになるのに対し、食物繊維は消化吸収されずエネルギーにならない。血糖値を上げるのは、3大栄養素のうち、炭水化物の糖質だけである。

 江部の『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』によると、糖質制限の基本は「ご飯やパンなどの主食やいも類など、糖質の多い食品をほとんど摂らない」、「肉や魚、油ものなど、脂肪分やたんぱく質の多い食品は好きなだけ食べてもいい」の2点。

 つまり、ご飯、パン、麺類、イモ類、根菜類(ニンジンのGI値が高いように、大半の根菜は糖質が多い)、甘いお菓子やジュースなど、糖質をたくさん含む食品を控えて血糖値が上がるのを防ぐ。そのかわり、糖質を含まない肉と魚はどんなに脂っこくてもカロリーを気にせず食べられる。卵や大豆製品、根菜以外の野菜類もお腹いっぱい食べられ、カロリー制限も不要だ。

 アルコールでは、ウイスキーや焼酎といった蒸留酒は糖質が含まれないので飲んでOK。醸造酒は基本、NGだが辛口ワインだけは飲める。というように、ルールはゆるく、とても簡単だ。

 先述したように糖質を摂ると食後に血糖値が上がり、インスリンが分泌される。江部によると、食後血糖値の上昇とインスリン分泌の繰り返しが糖尿病と肥満ほかの生活習慣病を引き起こす要因。空腹時血糖値と食後血糖値の差を「ブドウ糖スパイク」と呼び、その差が大きいほど血管が傷ついて、動脈硬化や心筋梗塞のリスクが高まるという。

 いま健康でも、小さなブドウ糖スパイクの積み重ねがメタボを招くそうだ。つまり、血糖値を上げなければインスリンの分泌が抑えられ、糖尿病のみならず、太りづらくなる。


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